万葉の植物  あふひ を詠んだ歌
                                2012.12.26 更新                                                                       

 

    
      フユアオイ                        フタバアオイ


   
あふひ (万葉表記  葵 )     フユアオイ  (アオイ科)

アオイ科の多年草。
古代は野菜として栽培されていました。しんなりと柔らかい葉を、咲き初めた花と共に食すとおそらく美味でしょうね。
実(冬葵子・とうきし)は薬用に(利尿剤)。
万葉集』、『源氏物語」(藤袴)にあるのはこのフユアオイ。『枕草子』や同じく『源氏物語』の葵、須磨、若菜下に現れるのは、フタバアオイ( 二葉葵・ウマノススグサ科)。フタバアオイは卵針形の葉が特徴的で 、徳川家の「葵の御紋」はフタバアオイを3枚使ったデザインです。

     葵の御紋 

フタバアオイの別名は「賀茂葵(かもあおい)」 。京都の下鴨(神社のご神紋で、毎年5月中旬に行われる、下鴨神社の「葵祭り」で知られます。


 つぎ延ふの後も逢はむと葵花咲く     作者不詳 巻16-3834

  (6種類の食用になる植物を詠みこんだ戯笑歌。梨がなり、棗が実り、黍も粟も収穫してもあなたに会えない。這う葛のように月日を経て後に逢いましょう。ほら、あふひの花が咲いています。葵・あふひ=会う日に掛けて。

巻16には伝説歌、戯笑歌などが残されています。機知、諧謔、滑稽さを歌いのちの俳諧や川柳、狂歌に繋がるもの。

       さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む狐に浴むさむ     長忌寸意吉麻呂 3824

        食薦敷き青菜煮て来む梁にむかばき懸けて休むこの君      長忌寸意吉麻呂 3825

       蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家なるものは芋の葉にあらし 長忌寸意吉麻呂 3826

       一二の目のみにはあらず五六三四さへありけり双六のさえ    長忌寸意吉麻呂  3827

       香塗れる塔にな寄りそ川隈の屎鮒食めるいたき女奴        長忌寸意吉麻呂  3828

       醤酢に搗きかてて鯛願ふ我れにな見えそ水葱の羹       長忌寸意吉麻呂   3829

        玉掃刈り来鎌麻呂むろの木が本とかき掃かむため       長忌寸意吉麻呂  3830

       からたちと茨刈り除け倉建てむ屎遠くまれ櫛造る刀自        忌部首  3832