万葉の植物  なつめ   を詠んだ歌
                               2010.10.25 更新               

 
  

   
なつめ (棗)     ナツメ (クロウメモドキ科)

ナツメはペルシャからインド北西部が原産で、中国を経由して古くに日本に伝来した植物。新芽が出てくるのが庭の中でも一番遅く、毎年「枯れたのか」と心配になるほどです。
夏になって芽が出ることから「夏芽・ナツメ」。生食すると林檎の香りがし、乾燥させたものは、薬用になり(強壮作用・鎮静作用)
中国では五果のひとつとされています。(もも くり すもも あんず なつめ)
「毎日3つナツメを食べると年を取らない」言われる健康食品で、 老化防止や美容効果があるそうです!

ナツメヤシの名前は、実がこのナツメに似ていることから。
茶器の「棗」は、形が棗に似ていることから名づけられました。

子供の頃に庭にあったナツメの実の味が懐かしくて、探しに探してようやく我が物にした果樹です。
これも「大人買い」と言うのでしょうか。いまや見るだけで食すことは無いのですけれども。

万葉集には2首詠まれています。
 

  玉掃刈り来 鎌麻呂むろの木と棗が本と かき掃かむため     長意吉麻呂(ながのおきまろ)   巻16-3830

  (玉掃、鎌、むろの木、棗の互いに関連のない4種を詠んで1首にまとめた戯笑歌。長意吉麻呂(ながのおきまろは)は戯笑歌を得意とし、集中8首採られています。
玉掃は鍬と共に正月の初子の日に宮中で飾られました。養蚕を奨励する意味があったとされます。
写真右のように、ナツメの木の足元にひこばえが夏中次々と出てきます。切っても切っても懲りなく出てくるひこばえには、刺さえあるのですからたまりません。 きっとコウヤボウキを使って掃除したのだと、長意吉麻呂に共感するのです。)

  梨棗黍に 粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと 葵花咲く      作者不詳    巻16-3834

  (梨 棗 黍に粟が実り、葛が花を咲かせる。そのあとは葵の花(あふひ・会う)が咲くようにまた逢いましょう)