万葉の植物    たまはばき を詠んだ歌
                                2010.4.15 更新           

 
           
   たまばはき (万葉表記 多麻婆波技、玉箒)    コウヤボウキ (キク科)

高さ1m足らずの落葉小低木。
本州の関東以西から四国、九州に分布し、陽の当たる明るい林縁、特にアカマツ林に生育します。
秋に頭花を付けますが、地味で目立たない花 で、オケラの花に似ていなくもありません。
1年目の茎には葉が互生します。花は1年目の枝の先に付き、白から薄紅色で開花期は10月ごろ。
ところが2年目の茎には、初めの年に葉が付いていた部分から数枚の葉が出るので、一見葉が輪生しているようにも見えます。さらに興味あることに、この2年目の茎は秋に枯死してしまうのです。
写真は2年目の枝。この枝もこの秋までの命なのでしょう。(おや、1年目の枝が見当たらない---)
木本なのに、2年で枯れてしまう --- これは2年草ではないのか、という疑問を持ちますね。
  
玉箒は、コウヤボウキの枝をほうきに作り、繭だまやガラスの玉を 飾り付けたものです。玉は命を象徴し、玉を緒で貫いてあるので、命長かれと祈るもの。
玉は魂。魂を掃き寄せる呪物として、タマハバキを初音の日に飾りました。養蚕を勧める意味があったようです。
コウヤボウキは高野箒の意。
高野山では昔、竹を植えることが禁じられていました。竹で箒を作り売り世俗に走ることは、修行の妨げになると考えられたようです。代わりにコウヤボウキの枝で箒を作っ たのでしょう。
 

玉掃刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃かむため         長忌寸意由麻呂  巻16-3830 
                          
初春の初子の今日の玉箒手に取るからに揺らく玉の緒           大伴家持  巻20- 4493