万葉の植物  からたち   を詠んだ歌
                           2010.11.30 更新                

 
 

   
からたち  (万葉表記    )     カラタチ (ミカン科
       

カラタチ)は、ミカン科カラタチ属の落葉低木。 4〜5月頃葉が出る前に五弁の白い花を咲かせます。
恐ろしいことに?、写真にあるように枝に長く鋭いトゲがあ るのです。近づくのに一苦労ですよね。よって生垣に利用されてきました。耐寒性、耐暑性にすぐれ、病気に強いことから、温州みかんの台木として 使われるそうです。
中国が原産なので、中国の橘(たちばな)の意味の「唐橘(からたちばな)」略し、「からたち」と呼ばれてきました。
漢字の「枳」は中国名の「枳殻(きこく)」からきているようです。日本には8世紀ごろ入ってきました。
樹高2から4m。枝には稜があり長く鋭い刺を持ちます。刺も葉も互生し、3枚からなる葉はアゲハチョウの大好物。幼虫を見つけてもそのままにして起きましょう。
果実には種が多く、食用にはなりませんが、えも言われぬ揮発性の香りがします。香りを一度知ると虜になりそう。
青い実を半割りにし、乾燥させたものは「枳実(きじつ)」と呼び、健胃、利尿、去痰の効用があります。
柑橘類のなかでは一番耐寒性が強いので、ここ那須の地でもあちこちに見られます。
この耐寒性を利用すべく、現在オレンジとカラタチの細胞雑種された「オレタチ」が作り出されているらしいのですが、「オレタチ」がなんとも笑える名前だと思いませんか。
花言葉は「思い出、温情、泰平」。
するどい刺を持つことから、『万葉集』ではいばらの代表格とされ、人を拒否する存在で、橘に較べて品格の落ちるものと扱われていました。
カラタチの白い花や香りに注意され始めたのは江戸時代で、それ以後ようやく観賞価値が認められようになりました。
大正になり白秋の「からたちの花」の詩によって詩的な植物と再認識されましたが、あなたにもこの歌を歌って心を潤した思い出があるでしょうか。 


     からたちの花が咲いたよ。
     白い白い花が咲いたよ。

     からたちのとげはいたいよ。
     いい針のとげだよ。

     からたちは畑の垣根よ。
     いつもいつもとほる道だよ。

     からたちも秋はみのるよ。
     まろいまろい金のたまだよ。
 
     からたちのそばで泣いたよ。
     みんなみんなやさしかつたよ。

     からたちの花が咲いたよ。
     白い白い花が咲いたよ。
                        北原白秋 作詞  山田耕作 作曲
 
  からたちと 茨刈り除け 倉建てむ 屎遠くまれ 櫛造る刀自    忌部首 巻16-3832

 おやまあ。
 この歌は機知、諧謔、滑稽さを歌った戯笑歌で、歌の流れはのちの俳諧や川柳、狂歌に繋がるもの。