さぼんそう 

  サボンソウ  Bouncing-Bet
          
 
(Saponaria officinalis) ナデシコ科サポナリア属)

植物名のサポナリア・オフィチナーリス(Saponaria officinalis)は、サポナリア(石鹸のような)を、オフィチナーリス(薬))は薬用に用いられていたことを表します。名前の通り、根や葉にはサポニンが含まれていて、さまざまな方法を使い石鹸液を作ります。ソープワート、すなわちサボンソウの名前はここからきました。
 

 バリー家の庭に咲いていたのは)バラ色のブリーディング・ハーツ、真紅のすばらしく大輪の牡丹、白くかぐわしい水仙や、棘のある、やさしいスコッチ・ローズ、ピンクや青や白のおだまきや、よもぎ(clumps of southernwood)や、リボン草や、はっかの茂み、きゃしゃな、白い羽根のような葉茎を見せているクローバーの花床、つんとすましかえったじゃこう草prim white musk-flowersの上には、燃えるような緋色の花が真っ赤な槍をふるっている……            
            『赤毛のアン』 第12章  おごそかな誓い


の部分の原文は:
There were rosy bleeding-hearts and great splendid crimson peonies; white, fragrant narcissi and thorny, sweet Scotch roses; pink and blue and white columbines and lilac-tinted Bouncing Bets; clumps of southernwood and ribbon grass and mint; purple Adam-and-Eve, daffodils, and masses of sweet clover white with its delicate, fragrant, feathery sprays; scarlet lightning that shot its fiery lances over prim white musk-flowers; a garden it was where sunshine lingered and bees hummed, and winds, beguiled into loitering, purred and rustled.

「Lilac-tinted Bouncing Bet」と「purple Adam-and-Eve」が訳されていません。(村岡花子訳)
令和元年改訂版では「薄紫色のシャボン草」、「紫色のらん」と訳出されています。
ここでは「L
ilac-tinted Bouncing Bet」を見ることにします。

        我が家の庭に咲く花。(八重タイプ)
 

一重タイプ

Bouncing-Betはヨーロッパから中央アジア原産の多年草。日本には明治時代の初めに渡来し、園芸用として栽培されています。P.E.島の野原の写真に、このサボンソウがしばしば見られることから、当時も野生種が島に広く繁殖していたと考えられます。 肝臓病や去痰に役に立つとあり、さらに根を煮出した液は植物毒にかぶれた場合の治療薬としても用いられました。

しっかり者のミセス・バリーです。庭で栽培していたのは、石鹸の役目も期待してでしょう。
根や葉にはサポニンが含まれており、煮出すと石けん液ができます。
この液は洗浄効果はもちろんのこと、優れた生地再生作用があり、特にウール類の繊維を痛めないので、重宝されました。花期は夏。花はこんもりと集まって咲くので、真夏の庭の彩りに最適です。
原文にモンゴメリが書いた「Bouncing Bets」とは「洗濯女」の意味。
バウンドさせる・・・・洗濯物を石に叩きつけたり、棒でたたいたり。その動作から「
Bouncing Bets」の名前がきたのではないでしょうか。

 
一度植えると、絶やすのが難しいほど、生育旺盛。
逃げ出したサボンソウが人里近くの原野や道端などに広がっているのを見かけ、その繁殖力には驚かされます。
地下茎を長く伸ばし、思わぬところからひょっこりと花茎を伸ばし、抜いても抜いても抜ききれないのですから。

  

 

 

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