ぼたんか しゃくやく か    

   シャクヤク   Peony  (Paeonia lactiflora 
                    (ボタン科ボタン属) 
草本

多年草で、高さ60センチ程度。日当たりと肥えた土地を好み、春一番に花芽を付けた紅色の花茎を伸ばすさまは、春を待ちかねる心と重なって嬉しいもの。花色もさまざま。
皐月の空に悠々と花を開くく様子を見るのは心躍る楽しさ。

ギリシャ神話に、「医の神・ペオンは、オリンポス山から掘ってきたシャクヤクの根を煎じ、黄泉の国の国王の傷を治した」とあるように、万能薬として漢方薬の中でも特に重要な植物とされています。

ボタン    (Paeonia suffruticosa)は、落葉低木。木本。

    剪定をしないで放置すると高さは2m近くまで伸び、それも楽しみ。牡丹属の総称。

 芍薬、牡丹ともに中国が原産 。元は薬用として利用されていましたが、唐の時代以後、牡丹の花が「花の王」とされて愛好されました。「花の宰相」の別名も。

例えば、中国での官僚登用試験である「科挙」において。
第3位で及第した人物は「探花」と呼ばれ、首都の庭園から牡丹の花を探して持参させて披露させ、その花を見つけた庭園を観賞する先導役を命じられました。 
 
 *「科挙」宮崎市定著 
  (高校生の時にこれを読み、いたく感激しましたが、残念ながら努力まで教わったわけでなく・・・)

牡丹が芍薬よりも、やや早く花を開きます。
もっとも冬の長い島では、春到来とともにさまざまな花が先を争うように咲くのでしょう。

花言葉は、外観に似合わず恥じらい、内気、清浄さ、はにかみ。


ばら色のブリーディング・ハーツ、真紅の素晴らしく大輪の牡丹(splendid crimson peonies)、白くかぐわしい水仙や、棘のある、やさしいスコッチ・ローズ、ピンクや青や白のおだまき草や、よもぎや、リボン草や、はっかの茂み、きゃしゃな、白い羽根のような葉茎を見せているクローバーの花床、つんとすましかえったじゃこう草の上には、燃えるような緋色の花が真っ赤な槍をふるっている、といったぐあいで・・・
                       『赤毛のアン』第12章 おごそかな誓い

 ((There were rosy bleeding-hearts and great splendid crimson peonies; white, fragrant narcissi and thorny, sweet Scotch roses; pink and blue and white columbines and lilac-tinted Bouncing Bets; clumps of southernwood and ribbon grass and mint; purple Adam-and-Eve, daffodils, and masses of sweet clover white with its delicate, fragrant, feathery sprays; scarlet lightning that shot its fiery lances over prim white musk-flowers; a garden it was where sunshine lingered and bees hummed, and winds, beguiled into loitering, purred and rustled.)
 


   真紅の牡丹 (庭で)    

     芍薬 (庭で
  けれどなんだか---どうしてかわからないけれど、アンがあの子たちといっしょにいると、アンのほうが半分も美人じゃないのに、あの二人がありふれて、見劣りがするのはどういうものかねえ。いわば、赤いしゃくやく(red peonies)とならんだ白水仙といったかんじですよね、まったくのところ」 (リンド夫人曰く)
                                             『赤毛のアン』 第30章  クィーン学院の受験

(But somehow--I don't know how it is but when Anne and them are together, though she ain't half as handsome, she makes them look kind of common and overdone-- something like them white June lilies she calls narcissus alongside of the big, red peonies, that's what." )


日本では、木本のものをボタン、草本をシャクヤクと呼んで区別しますが、英語ではどちらもPeonyと表します。
これが混乱する元で、この場合のピオニィ(Peony)はどちらだったのでしょう。
雪深い土地では、木本の牡丹の木部は、雪の重みで折れてしまうこともあるのです。ところが草本である芍薬は、秋の終わりに上部を切り取ると、雪の下で安全に冬越しができるのですが。
いずれ、島での植物の手入れについて調査する予定です。判明すればご報告しましょう。
はて。
リンド夫人やバリー家では、どちらを栽培していたのか。 いずれにせよ外来種のピオニィを庭に植えるのは、たとえば日本の奈良時代に、唐から渡来した梅の花木を愛でるのと同じような楽しみがあったのではないか。こう考えます。
花姿は、花言葉に似合わず派手で、特に牡丹の花の咲く速さには毎年ながら『残念」な思いをさせられます。
咲いたかと思うと、その時点ですでに散る準備をし、大きな種袋をつけているのですから。
 

日本では、「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」と美人を形容します。
リンド夫人は、華やかな美しさよりも、アンの清純な容姿と性格を、「白く香り高い水仙」」と評価するのでした。清らかさ、華やぎ、可憐な心を秘めた乙女の象徴としての白水仙 --- 孤児として グリーンゲイブルスに引き取られたばかりのアンに、悪口を並べ立てた人物の変わりように、アンに通り過ぎた歳月の確かさを思うのです。
白水仙については、別ページで見ましょう。 

ところが、ここに疑問が一つ残ります。
「『赤毛のアン 世界文学の玉手箱 5』 曾野綾子訳 河出書房新社」には以下の訳出文が見られます。

  ・・・・ただ、なんとなく、どうしてか知らないけれど、アンとあの二人が一緒にいると、アンのほうは半分も美人じゃないのに、あの二人がありふれた、つまんない娘に見えてくるのね。ふたりが白ズイセンなら、アンはさしずめ大輪の赤いシャクヤクといったところだね」。  第23章
 

ああ、おお。と言うしかありません。
感受性の違いでは済まないような気がします。
華やかなアンか、清純なアンか。