(バリー家の庭に咲いていたのは)バラ色のブリーディング・ハーツ、真紅のすばらしく大輪の牡丹、白くかぐわしい水仙や、棘のある、やさしいスコッチ・ローズ、ピンクや青や白のおだまきや、よもぎ(clumps
of southernwood)や、リボン草や、はっかの茂み、きゃしゃな、白い羽根のような葉茎を見せているクローバーの花床、つんとすましかえったじゃこう草(prim
white musk-flowers)の上には、燃えるような緋色の花が真っ赤な槍をふるっている……
『赤毛のアン』 第12章 おごそかな誓い
この部分の原文は:
There were rosy bleeding-hearts and great splendid crimson peonies;
white, fragrant narcissi and thorny, sweet Scotch roses; pink and
blue and white columbines and lilac-tinted Bouncing Bets; clumps of
southernwood and ribbon grass and mint; purple Adam-and-Eve,
daffodils, and masses of sweet clover white with its delicate,
fragrant, feathery sprays; scarlet lightning that shot its fiery
lances over prim white musk-flowers; a garden it was where sunshine
lingered and bees hummed, and winds, beguiled into loitering, purred
and rustled.
「clumps of southernwood」と「purple Adam-and-Eve」が訳されていません。(村岡花子訳)
令和元年改訂版では「薄紫色のシャボン草」、「紫色のらん」と訳出されています。
このページで「purple Adam-and-Eve」を探してみます。 |
探索開始です。この「purple
Adam-and-Eve」はどんな植物か。
参考書をめくってみても、この植物が見つかりません ・・・。
うれしいことに 『「赤毛のアン」の生活事典』を参照すると、「ふじ色のラン」の項目で説明されていて、おお嬉しい、感謝致します。
原産地はヨーロッパ。日本への渡来時期は不詳。戦後、村岡花子訳のアンシリーズが出版された時代には、いまだこのプルモナリヤが日本に伝わっていなかった可能性もありますね。
ムラサキ科の多年草で高さは三十〜四十センチ。花茎を伸ばした先に、ベル形の花を数輪まとめてつけます。つぼみの時と花が開いた後の色に違いがあり、そのことから「Adam-and-Eve」と呼ばれたのかもしれません。
本来の名前とは別に、普及用の名前を付けるのは園芸界ではよくあることです。「Soldiers
and Sailors」という別名も持つ、とありますが、これは確認できませんでした。兵士と水夫・・・陸海軍人?どうしてでしょうね。
源平クサギ、紅白のヤマボウシ、紅白の桃といったように、色違いや咲き分けの木本を見ることがありますが、同じ個体で咲き進むにつれて色が変化すると言えば・・。中国から渡来し、古来から作られている花木の「酔芙蓉」でしょうか。
写真は、庭のプルモナリア。ピンクのつぼみからブルーに咲き進みます。寒さには強く強健で殖えますが、夏の暑さと乾燥に弱く、昨年日当たりの良い表庭から裏庭に移植しました。
園芸種は多種作り出され、なかには「プルモナリヤ・アン」と名前が付いた種類も!
花色はピンク、残念ながら、スペルは「Pulmonaria 'Ann'」で「e」はついていません。
Pulmonaria
'Ann' |