はなよめそう

 はなよめ草  bride's bouquet
 
 
柳風荘の庭は)小径のへりはたいそうきちんとした、整然たる花壇となっており、リボン草ブリーディングハートや、鬼ゆりや、アメリカなでしこsweet-William)や、よもぎ、花よめ草(bride's bouquet)や、紅白のひな菊、それにリンドのおばさんのいわゆる「芍薬」が植わっていました。 
                          『アンの幸福』 最初の1年

 (
The path was edged by very prim, well-ordered beds of ribbon grass and bleeding-heart and tiger-lilies and sweet-William and southernwood and bride's bouquet and red-and-white daisies and what Mrs. Lynde calls 'pinies.' )
 

    セイヨウナツユキソウ

    シジミバナ

      ユキヤナギ

     コデマリ 
 

これは難しい・・・。まず白い花であることは確かでしょう。
bride's bouquet」で探してみると、当然花嫁が手に持つブーケであると。画像には白いラン、ジャスミン、カスミソウなどのいわゆる結婚式の花がずらり。「ハナヨメソウ」で検索すると、ブライデワート(bridewort)だと推奨されます。
別名をメドウスイートと呼び、バラ科 シモツケソウ属の宿根草。和名はせいようなつゆきそう(西洋夏雪草)。ああそうか。キョウガノコの白タイプでしょう。
他には、花嫁花として知られる、マダガスカルジャスミンや、ツユクサ科のブライダルベールなどが浮かびますが、これらは共通して寒さに弱く、とても柳風荘に咲いているとは思えません。フランスでは、花嫁にスズランを贈る風習があり、メーデーにはスズランの花を贈り合うことから、スズラン?
 

作者モンゴメリの日記に(1901.8.28)、「はなよめ草は昔風の庭で育てられている多年草。花嫁が持つ花束のように白い」との記述があります。これで分かるのは「白い花、多年草で、樹木ではない」ということでしょうか。

作者が昔風の庭の条件として言及している場面があります。(『可愛いエミリー』)

まず、高い樹に囲まれていること。たとえばヤナギ、トウヒ、カエデ、シラカバなど。庭にあるべき花としては、アイリス、鬼百合、菊、白水仙、忍冬、芍薬、ばら、立葵、パンジー、ヒナゲシ、ビジョナデシコ、ケマンソウと言ったこれまで見てきた花たち。 

ところが、大発見でした。
気分転換に『マリーゴールドの魔法上』(田中とき子訳)に手を伸ばしたら、第3章に、
 
 


段々のわきの大きな丸葉柳桜は---大きい祖母はカタログの意味もない名称など無視して「花嫁の花輪(Bridal Wreaths)」と呼んでいるが---夕闇の中で、双子の雪の吹きだまりのように見えた。 

The big spireas that flanked the steps--Old Grandmother always called them Bridal Wreaths, with a sniff for meaningless catalogue names--were like twin snowdrifts in the dusk
 

このspiraeaとはシモツケ属の植物のことで、シモツケソウ、シジミバナ、コデマリ、ユキヤナギなどを言います。
単に田中訳の「丸葉柳桜」だと、和名をバイカシモツケ、別名リキュウバイ(利休梅)。
おお、発見したつもりでいましたが・・・。
モンゴメリが、今までもあったように、自分なりの名前を付けたとしたらこれはお手上げでしょうか。