マリーゴールド

 マリゴールド Marigold (Tagetes キク科マンジュギク属) 

 

 十月にもかかわらず、庭はなつかしい昔風の浮世離れのした花や灌木で、いまなお美しく色どられていた。----さんざし(sweet mayよもぎクマツヅラアリサムペチュニア、きんせんか(marigolds)、菊(Chrysanthemums)などが植わっていた。矢筈模様の小さな煉瓦塀が門から玄関へとつづいていた。屋敷全体がどこか遠くの田舎の村から持ってきたかのようだったが・・・・
                           『アンの愛情』 第6章 パティの家に出あって 
 
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Before it was a tiny garden, surrounded by a low stone wall. October though it was, the garden was still very sweet with dear, old-fashioned, unworldly flowers and shrubs -- sweet may, southern-wood, lemon verbena, alyssum, petunias, marigolds and chrysanthemums. A tiny brick wall, in herring-bone pattern, led from the gate to the front porch. The whole place might have been transplanted from some remote country village; yet there was something about it that made its nearest neighbor, the big lawn-encircled palace of a tobacco king, look exceedingly crude and showy and ill-bred by contrast. As Phil said, it was the difference between being born and being made.)

   「
なつかしい昔風の浮世離れのした花や灌木」・・・村岡訳の魅力はここにあります。
 
    
     これは八重タイプ 夏の庭に似合います。

    大好きなレモンイエロー色 

これはややこしい。
そもそもマリゴールドと呼ばれる植物は、大きく二つに分けられます。

まず、「きんせんか色の空」のページでみたカレンデュラ属の「きんせんか」。(コモン・マリゴールド、またはポット・マリゴールドとも)さらに同じキク科でマンジュギク属の「マリゴールド」。
このマリゴールド(マンジュギク属)は、またもや大きく二つに分けられますが、今はこれを問題にしません。(背の高いアフリカン・マリゴールドと、低いフレンチ・マリゴールド)

 日本では、キンセンカは秋に種を蒔き、春から初夏にかけて花を楽しみ、暑さとともに枯れます。
一方マリーゴールド(万寿菊)は春に種を蒔き、初夏から秋にかけて花を咲かせますが、短日植物なので、初秋から秋にかけてその盛りを迎えます。
ところが、島の自然の中でキンセンカの苗は冬越しできません。つまり、島では両方種を春に蒔く、ということになりましょう。

次に、咲いている時期から推測しますと、キンセンカは暖かくなるに連れて生長し、花を付けますが、いくら夏が低温の島でも、夏至を過ぎるとしだいにその生育速度は鈍り、花の数も減り、気温の低下と共に しおれ始めます。
何度かカナダの夏を経験しましたが、このキンセンカの花を見たことがありません。

島の十月はすでに秋の終わりがけ。朝夕冷え込む日もありますね。その時期パティの庭で咲いていたのは、上記のことから、日本で言う万寿菊(マリゴールド)。
日本の種苗会社大手のカタログには、キンセンカはCalendula、マリゴールドがMarigoldという名前で載っていることでも、パティの庭で咲いていたのは、庭を明るくするマリゴールドだったでしょう。

ちなみに、このマリゴールド、秋の初めに挿し芽にすると、あっという間に活着し、十月には背の低い花が群れ咲く様子を楽しめます。
メキシコ原産、根に線虫の防除効果があるので、コンパニオンプランツとして利用されることもあります。