スイートメイ

 スイートメイ Sweet May ???
 
   (下宿先になるパティの家の庭で) 十月にもかかわらず、庭はなつかしい昔風の浮世離れのした花や灌木で、いまなお美しく色どられていた。----さんざし(sweet may)、よもぎクマツヅラlemon verbena)、アリサムalyssum)、ペチュニア、きんせんか、菊(chrysanthemums)などが植わっていた。矢筈模様の小さな煉瓦塀が門から玄関へとつづいていた。屋敷全体がどこか遠くの田舎の村から持ってきたかのようだったが・・・・
                『アンの愛情』 第6章 公園にて

 October though it was, the garden was still very sweet with dear, old-fashioned, unworldly flowers and shrubs -- sweet may, southern-wood, lemon verbena, alyssum, petunias, marigolds and chrysanthemums. A tiny brick wall, in herring-bone pattern, led from the gate to the front porch.

        
    Mayweed  (キク科)

日本のサンザシ(イワナシ・Epigaea asiatica)
  

このさんざし(sweet may)が、アンの言うほんもののさんざし(メイフラワー、実はTrailing arbutus、日本のイワナシ)なのか、それとも他の植物なのか?思い悩んでいます。 

サンザシだとすると、とっくに花は終わっていて、ツツジに良く似た葉が秋の日に照り映えているのでしょう。
だとするとなぜ作者が「MaFlower」ではなくて、「Sweet may」という言葉を 使ったのか納得がいきません。
甘い香りのするMay

あれこれ植物図鑑を調べていると、『Field Guide to North American Wildflowers: Eastern Region』に、キク科の「mayweed(カミツレモドキ)」というのを見つけました。
極地以外の北米に分布し、香りもするとあります。日本では北海道に見られる外来種でコシカギク(パイナップルウィード、和名はみかん花)に良く似ている植物です。
あるいは?ひょっとして?

図鑑には、このmayは5月を意味せず、ラテン語起源の言葉の「maiden、中心の、中央の」からきているとあります。花期は秋、十月のパティの庭に咲いていてもおかしくありません。
牽強付会。
なんとか正解にたどり着きたいと思うあまり、とんでもない方向へと探索の指が向いてしまったかもしれません。
村岡訳の「さんざし」で、パティの家の雰囲気は十分味わえるので、アンのファンとしては十分なのですけど。