レモンバーベナ

  レモンバーベナ  (lemon verbenaクマツヅラ科コウスイボク科 

南米原産、クマツヅラ科の落葉低木で和名のこうすいぼく(香水木)の通り、葉に触れただけでレモンのような爽やかな香りを放つハーブとして知られます。
お茶にするとさらに香りは高まり、葉を乾燥させてもそのかぐわしさは失われることがないので、お菓子の香りづけに、ポプリや匂い袋にと多様な楽しみ方があります。効用は食欲増進や消化促進作用など。
 
 十月にもかかわらず、庭はなつかしい昔風の浮世離れのした花や灌木で、いまなお美しく色どられていた。----さんざし、よもぎクマツヅラlemon verbena)、アリサム(alyssum)、ペチュニアきんせんか、菊などが植わっていた。矢筈模様の小さな煉瓦塀が門から玄関へとつづいていた。屋敷全体がどこか遠くの田舎の村から持ってきたかのようだったが・・・・
 
                 『アンの愛情』 第6章 パティの家にであって 

(October though it was, the garden was still very sweet with dear, old-fashioned, unworldly flowers and shrubs -- sweet may, southern-wood, lemon verbena, alyssum, petunias, marigolds and chrysanthemums. A tiny brick wall, in herring-bone pattern, led from the gate to the front porch. The whole place might have been transplanted from some remote country village; yet there was something about it that made its nearest neighbor, the big lawn-encircled palace of a tobacco king, look exceedingly crude and showy and ill-bred by contrast. As Phil said, it was the difference between being born and being made.)
 

    

パティの家の庭に咲く花や木の探索を続けます。このレモン・バーベナとは?
中学生のころ、『風と共に去りぬ』を風呂の焚き口に座り込んで読み、ある記述にすっかり魅せられてしまいました。スカーレットの母親のエレンがこのレモンバーベナの匂いが好きで、ハンカチに香りを移していた・・・、と。
淑女の鑑のようなエレンが好きだった香り・・・どんな香りなのかな・・・。

パティの家では、このレモンバーベナを乾燥させてクッションに詰めたのかもしれません。
ところが、解せないことがあるのです。このレモンバーベナ、寒さに比較的弱く、島の戸外の寒気の中で冬越しできるとはとても思えません。
ビクトリア時代にはLemon Plantと呼ばれて珍重された低木ですから、あるいは作者は「この庭にはこのLemon Plantがぜひ必要だ」と考えてリストに入れたか、あるいは譲って考えたとして、大きな鉢に植えて冬の寒さが来るまで戸外で楽しんだか。
 
       
 ← ひょっとして、ハーブの一種レモンバームと混同したか。 

さらに不思議なことが。原文には「lemon verbena」とあるのですが、村岡訳では「クマツヅラ」と科名のみ表記されています。
戦時下での翻訳なのでこのlemon verbenaがどのような植物なのか、ましてハーブとして使われているという事実が知られていなかったのかもしれませんね。
従ってここは科名のクマツヅラで代表させたのだと考えました。

クマツヅラ科の植物には、ランタナ、カリガネソウ、紫式部、バーベナ(美女桜)など。 (左から)