すずらん  

  スズラン   Lily of the valley スズラン亜科スズラン属
     カナダでは、「谷間の姫百合」という優雅な名前も持ちます。日本の古名は「君影草」。

 原産地はヨーロッパ、北アメリカ。耐寒性が強くやや日陰の肥えた土地を好み地下茎で殖える多年草。
日本ではドイツスズランとして出回っています。
日本自生のスズランは長楕円形の葉に隠れるように花をつけますが、ドイツスズランは葉の少し上まで花茎を伸ばし、花を咲かせる 。これが大きな違いです。
日本自生のスズランはいまや絶滅に近い存在で、耐暑性の無い日本スズランに対して、普通に見かけるのは香りが強く丈夫で育てやすい外来種のドイツスズラン。写真は我が家の庭のドイツスズランです。開花期は、那須では五月中旬。島では、桜の時期より後、6月でしょう。
全草に有毒物質が含まれていて、強心作用があるので扱いに注意。

アンは、何度も記憶に無いはずの生家の様子を思い浮かべます。
幼い自分が両親に抱かれていた生家、そこには。
 

  客間の窓にはすいかずらがからんでるし、前の庭にはライラックが植わっていて、門を入ったところにはすずらんか咲いていたに違いないと思うの。(lilies of the valley
        『赤毛のアン』第5章  「緑の切妻屋根」の朝
 
 ((
I think it must have had honeysuckle over the parlor window and lilacs in the front yard and lilies of the valley just inside the gate. )

                             庭のスズラン

スズランは『赤毛のアン』の中にもう一度現れます。
ダイアナと一緒に恋人の小径を通って学校へ通う描写に、
  しだ星草やすずらんや真紅の草の実がずっとその道に沿って茂り、・・・
         『赤毛のアン』 第15章  教室異変


 ( ”ferns and starflowers and
 and scarlet tufts of pigeonberries grew thickly along it;”)

 とありますが、初秋のこの時期 スズランが咲いているか、という疑問が残ります。

生家の庭にあった「lilies of the valley」とこの「wild lilies-of-the-valley」のほんの少しの違い ---- wild が入るかどうか。これで疑問が解けるかもしれません。

星草はスターフラワーすなわちツマトリソウ、真紅の草の実はゴゼンタチバナの赤い実と考えると、すずらんの花期の初夏と季節が合いません。
この「wild lilies-of-the-valley」はユリ科の多年草マイヅルソウと考えられます。→ マヅルソウ参照

     (Field Guide to North American Wildflowers: Eastern Region )    
     ( 
http://www.gov.pe.ca/photos/original/PEIwdlndplants.pdf )

「真紅の草の実」とはなにか。興味津々です。別紙でそれを探ってみましょう。


すずらんの花言葉は「幸福の再来」、「優しさ」「幸福」。
長い歳月をささげた祖母の介護から解放され、モンゴメリが結婚式に手にしたブーケは白ばらとすずらんでした。
レドモンドの卒業式に、アンはギルバートが贈った鈴蘭を身に着け、当時の恋人ロイ・ガードナーを落胆させます。
互いに切磋琢磨した、懐かしいアヴォンリーの村での歳月を思う時、友情を最優先したアンの気持ちを、この薫り高い、村の野に咲く鈴蘭で表現したかったのだと思うのです。
でもね。ロイ・ガードナーが贈ったすみれは、どんな色でアンを誘ったのでしょう。これは永遠の謎ですね。「芯に紫色の縞のある白いすみれ」かもしれません。
それともカナダの野に咲くビオラ・ソロリア・スノープリンセスだったのかもしれませんね。

   この世はこんなに明るく美しいときざむ心にすずらんの見ゆ   (Ka)