スターフラワー  

  スターフラワー Starflower  サクラソウ科ツマトリソウ属   
                                                                    日本の同属の植物はツマトリソウ。

スターフラワーは、北半球の亜寒帯に分布する多年草。
野原や林縁に生育し、細い地下茎を伸ばして繁殖し、互生する葉は一見輪生するように集まり、その葉腋から花茎を伸ばして白い花を咲かせます。珍しいのは、7枚の花弁であること。
図鑑でstarflowersを探すと、この花が見つかり、今回の探索はとても簡単?に終わりそう。
同属のツマトリソウが日本の亜高山や北海道に生育します。

もっとも、星形の花の名前に「スター」を被せて呼ぶ花にはほかにも、ハナニラ・花韮、ポリッジ、ルコウソウ、キキョウ・桔梗などがありますから、まだまだ油断はできません。

  そのあたりに咲いていた花は、やさしくしおらしい無数の釣鐘草と、去年の花の精にも似た青白いスターフラワー(aerial starflowers,)だけだった。
                                                         『赤毛のアン』   第9章 レイチェル・リンド夫人あきれる

  (・・・the only flowers there were myriads of delicate "June bells," those shyest and sweetest of woodland blooms, and a few pale, aerial starflowers, like the spirits of last year's blossoms. Gossamers.) 

グリン・ゲイブルスに受け入れてもらえて、ようやく心の安らぎを得たアンは、島の景色に心奪われます。
釣鐘草とスターフラワー、この二つの花の組み合わせが、日々の暮らしを楽しむアンの喜びを表しているようです。

「去年の花の精にも似た青白いスターフラワー」。・・・モンゴメリはこの表現で何を意味しようとしたのか。
日々の暮らしや努力の積み重ねか。人生で一番大切なものは、決して派手でなく小さく零れ落ちるようなもの。
心の支えになるような景色や花や樹であろうかと。そして、心に従順で他人に誠実であれと。
花言葉は「純真」。

もう一か所、このスターフラワーが出てくる場所は、

 しだや星草(starflowers)やすずらんwild lilies-of-the-valley)や真紅の草の実がずっとその道に沿って茂り、空気はいつも快い香気が漂っていた。
                                        『赤毛のアン』  第15章  教室異変

(
white stemmed and lissom boughed; ferns and starflowers and wild lilies-of-the-valley and scarlet tufts of pigeonberries grew thickly along it; and always there was a delightful spiciness in the air and music of bird calls and the murmur and laugh of wood winds in the trees overhead. )
 
ダイアナが「樺の道」と名付けた学校への道。
朝な朝な、二人は光が降りそそぐ小径の、揺れる景色を楽しむのでした。
この「すずらん(wild lilies-of-the-valley)がはたしてスズランなのか。すずらんのページで考察するので参照してください。
星草。この表現、まっすぐ心に届きますよね。
 葉は互生している

「つま」とは、端や縁(へり)、または軒先、軒端(のきば)を意味します。鎧の袖などの端を、別色の威糸(おどしいと)や皮で継ぎ合わせること、とあります。花弁の縁がうす紅色に縁取られている個体があることからツマトリソウ。
残念ながら、いまだ純白の花しか見たことがありません。
白い花はかそけく、すこしの風に揺れてうなずくようです。しかし思いのほか性質は強く、『アンの青春』に、友人の結婚式に「緑のドレスを着て、髪にこのスターフラワーを差そうと思うの」とギルバートに話すシーンがあります。
赤い髪に白い星の花。きっと乙女らしいアンの姿を引き立てたことでしょう。

     ○ 諾だくと花に従ふ日のありて乙女さびつつ星草のはな  (Ka)