まいづるそう    

  カナダまいづるそう  (← すずらん) 
                                     
 (Maianthemum canadense)  ユリ科マイヅルソウ属

カナダマイヅルソウは、ユリ科マイヅルソウ属の多年草。
心形の葉が互生し、花茎の先に白い房状の花が咲きます。花期は初夏から夏。夏の終わりにまだらな点のある金茶色の実を実らせ、秋が深まると赤く熟します。
嬉しいことに、カナダメイフラワーの別名を持ちます。
 

  たしかにそうだった。アンだけでなく、この道に偶然さしかかった人々もそう思った。それはちいさなまがりくねった小径で、うねうねと長い丘を越えて、ベルさんの森の真ん中をぬけていた。
この森では光線がエメラルドのような葉の間を幾重にもくぶってさしこんでくるので、まるでダイヤモンドの心臓のように透きとおって映った。
小径のへりにはほっそりした若い樺が、幹は白く、しなやかな枝で、どこまでも立ちならんでいた。しだ(ferns)や星草starflowers)やすずらんwild lilies-of-the-valley)や(*真紅の草の実scarlet tufts of pigeonberries)がずっとその道に沿って茂り、空気はいつも快い香気が漂っていた。
木々の梢では小鳥がさえずりかわし、風がひそひそささやきあったり笑ったりしていた。ときおり、じっと静かにしていると、うさぎが道をよこぎってとんで行くのが見られ、たまにはアンとダイアナもそれにつきあたることがあった。谷のところで小径は街道にでて、それからえぞ松の丘をのぼればもう学校だった。
                『赤毛のアン』 第15章 教室異変

It was. Other people besides Anne thought so when they stumbled on it. It was a little narrow, twisting path, winding down over a long hill straight through Mr. Bell's woods, where the light came down sifted through so many emerald screens that it was as flawless as the heart of a diamond. It was fringed in all its length with slim young birches, white stemmed and lissom boughed; ferns and starflowers and wild lilies-of-the-valley and scarlet tufts of pigeonberries grew thickly along it; and always there was a delightful spiciness in the air and music of bird calls and the murmur and laugh of wood winds in the trees overhead. Now and then you might see a rabbit skipping across the road if you were quiet--which, with Anne and Diana, happened about once in a blue moon. Down in the valley the path came out to the main road and then it was just up the spruce hill to the school.

ながながと引用しました。
作者モンゴメリがどうしても抑えきれなかったこと、それは過剰な装飾が成された描写です。
一流の文学者になれなかったのかもしれませんが、読者にとって、島の景色を彷彿とさせる嬉しい部分です。

   
     ↑カナディアン・ロッキー山中


    ↑ウズラの卵のような実ができます。
 

         
       日本のマイヅルソウ

学校までの細く曲がりくねった小径の美しさが、木漏れ日が光る様子や、道沿いに咲く花や植生の描写で表現されています。
星草はスターフラワーすなわちツマトリソウ、この時期の真紅の草の実は別紙で見るゴゼンタチバナの赤い実でしょう。「lilies-of-the-valley」なら、村岡訳のすずらんを意味し、wild lilies-of-the-valley」はユリ科の多年草カナダマイヅルソウと考えられます。
カナダマイヅルソウは、カナダメイフラワー(Canada Mayflower)とも呼ばれ、カナダではごく一般的にみられる花。
林床に大きな群落をつくり、丈は短いながらも、地面にみっしりと広がる様子はとても美しく、苔の上に横たわって夢見ることさえあるアンにとって、カナダマイヅルソウのしっとり広がる緑のじゅうたんのほうが、花や赤く熟した実よりも、魅力的だったのでしょうか。

*)さて、この「真紅の草の実」がどの植物なのか、諸説あって、迷います。別紙で検証してみましょう。