万葉の植物  きみ  を詠んだ歌
                            2012.9.17 更新             


  

   


   
きみ  (万葉表記  黍 岐美 寸三 )    キビ (イネ科)

原産地はインド。アワとともに古くから栽培されてきた一年生草本作物。五穀のうちの一つ。乾燥、寒さに強く痩せ地にも育つ救荒植物。草丈1m前後、実はアワよりも少し大きい。
秋の初め茎の先に稔り、穂が垂れ下がる。実は黄色で黄実→キミへ転訛したか。
原産地は、中央からアジアの温帯地域で、日本へは、朝鮮を経て伝わったと推定され、縄文時代に渡来したアワより遅く、弥生時代に渡来したと考えられてい ます。

アワと同じくうるち種ともち種があり、そのまま粥に、あるいは粉にして団子に食されます。
日本一と書いた旗を持ち、黍団子を懐にして鬼退治に出かけた桃太郎伝説の黍団子は、このキミから作られました。
作付け面積は減少の一途をたどり、現在は伝統食としての餅や団子に利用されますが、最近は五穀ブームに乗って復権を果たしつつあるようです。
 

集中1首のみ

 黍につぎ延ふの後も逢はむと葵花咲く      作者不詳 巻16-3834  

 (物の名前を詠みこんだ言葉遊び=戯笑歌。巻16にはこの種の歌が多く集められています。
「キビにアワ」で「君に会う」にかけ、梨棗黍粟の順に稔りそして「はふ葛の」(伸びてゆく葛が今は分かれても、再び会うことがあるように)、が「後に逢はむ」の序詞となっています。
達者ですね。言葉をで遊ぶにも、漢詩などの教養を身につけていないと、こうは詠めません。さぞかし、宴会でこの歌を披露した時に喝采を浴びたことでしょう。
次の「葵花」は順番からいくと、冬の花になりますが、はて。
これはカンアオイなのか。ただいま調査中です。)