たんぽぽ  

   タンポポ たんぽぽ Dandelion (Taraxacum officinale キク科タンポポ属)

タンポポの原産地はユーラシア大陸。タンポポはもと鼓を意味する小児語でした。
ダンディライオン(dandelion)は、フランス語で「ライオンの歯」のダン=ド=リオン(dent-de-lion)から来たものです。
葉がライオンの歯を連想させたのでしょう。イタリア語では dente di leone、スペイン語 はdiente de león。ラテン語系ですから当然似ていますね。
日本では、日本タンポポが西洋タンポポに席巻されつつあるものの混在し、西洋や北米では西洋タンポポ(総苞がそり返る)が主流。
春一番に咲く黄色い花は、花粉介在者の昆虫に目に留まりやすい色なのです。
まるで春の陽を閉じ込めたような色ですね。

グリーン・ゲイブルスでのはじめての朝、アンの目に映ったのは、音楽とも思える景色のひろがり。

 家の両側は、一方はりんご、一方は桜の大きな果樹園になっており、これまた花ざかりだった。花の下の草のなかにはたんぽぽ(dandelions)が一面に咲いていた。紫色の花をつけたライラックのむせるような甘い匂いが朝風に乗って、下の庭から窓べにただよってきた。庭の下は青々したクローバーの原で、それをだらだら下ると窪地に出る。
                   『赤毛のアン』     第4章 「緑の切妻屋根」の朝 

( A huge cherry-tree grew outside, so close that its boughs tapped against the house, and it was so thick-set with blossoms that hardly a leaf was to be seen. On both sides of the house was a big orchard, one of apple-trees and one of cherry-trees, also showered over with blossoms; and their grass was all sprinkled with dandelions. In the garden below were lilac-trees purple with flowers, and their dizzily sweet fragrance drifted up to the window on the morning wind.)

裏庭のたんぽぽ
西洋たんぽぽは食し、
日本たんぽぽには情けをかける。



  カナダ、ロッキーの山の中で。
  これこそ西洋たんぽぽ

 『赤毛のアンの生活事典』には、たんぽぽを発酵させてホームメイドワインをつくる、とあります。ダイアナを酔わせた「いちご水」(実はレッドカランツのワイン)を思わせます。

訳者・村岡花子は、この部分を自作の童話『たんぽぽの目』と重ねながら訳したのではないでしょうか。
作者が作品をどのくらい愛するか。
     ---これが翻訳の成否を握る鍵。ならばはじめから成功が約束されていました。

『たんぽぽの
お酒』   (レイ・ブラッドベリ作 晶文社刊)によると。
「葡萄しぼり器で金色の花をしぼり、酵母菌を足して眠らせる」と。
おお、このたんぽぽ酒を起こす役目はどうぞ私に。

タンポポは身近で有用な植物。以下その利用方法を記述してみましょう。

たんぽぽの春サラダ。
丸みを帯びた若い葉とレタスを同量用意し、オリーブオイルでニンニクとベーコンを軽く炒めて酢油ソースを作り、和える。アサツキがあれば上に散らす。ほんのすこし苦味があって、早春の味。
ハーブティーに。
根を掘り出し乾燥させ、煎って粉状にし、コーヒーのように用いる。カフェインレスのコーヒーの出来上がり。
葉の天ぷら、お浸しに。
染色に利用する。

たんぽぽは。ビタミンや鉄分、カリウムなどを含み、消化促進、健胃効果、強壮作用、強肝作用、利尿作用などのある健康食品。我が家の裏庭に生えると、汚さないように大事にして利用します。 

もう一つ、たんぽぽの面白い習性をご紹介しますね。---- たんぽぽ体操

まず、一番元気なつぼみが花茎を伸ばし花を咲かせると、ほかのつぼみ達も順に茎を伸ばす準備を始めます。
花の終わった一番花は、更に茎を高く伸ばして陽に当たり、風に任せて種を飛ばしたあと、おもむろに地面に横たわり、他の花茎が伸びるのを邪魔しません。
入れ替わり立ち代わり、お日様が当たる場所を交換しているのです。
何日か置いて観察すると、それはまるでタンポポの体操。たんぽぽには老害は無いのです。

たんぽぽ、タンポポ、蒲公英。どの表記がお好き? 
   
○ つづみぐさ広ごりて咲く野にあらば六月のアンは大きな赤子(あかご)  (Ka)