さくら
さくら Cherry バラ科サクラ属
島の春は、さくらとりんごの花に象徴されます。マシューとマリラに引き取られてから始まるアンの新しい人生を予感させるような、春爛漫の島の美しさ。アンの物語は春に始まる必然性がありました。島の野生の桜は、Chokecherryと Pink
Cherryに代表されます。 |
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ウワミズザクラ (上溝桜) 20095.22 高原山 |
ズミ (酸実)2009.5.12 会津・田島町 |
青々した蔦がからみついた東の窓をのぞくと、左手の果樹園では白い桜の花がまっさかりだし(bloom
white cherry-trees)、小川のほとりの窪地では、ほっそりとした樺が頭をうなずかせているのが見えた。 『赤毛のアン』 第1章 レイチェル・リンド夫人驚く
(Its
windows looked east and west; through the west one, looking out on
the back yard, came a flood of mellow June sunlight; but the east
one, whence you got a glimpse of the bloom white cherry-trees in the
left orchard and nodding, slender birches down in the hollow by the
brook, was greened over by a tangle of vines.
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この桜はサクランボウを収穫する桜の花。 日本では、山桜や染井吉野桜よりも2週間早く開花します。 まだまだ寒気の残る季節。交配する昆虫類が果たしてこの季節に生息しているのか、と心配になる春浅い季節。 島ではどうでしょうか。寒冷地ですから、桜も林檎もスモモも、一度に花を開くのでしょうね。 ああ。いつか再訪したい・・・。 |
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直ぐ外に立っている大きな桜の木(A
huge cherry-tree)は枝が家とすれすれになるくらい近かった。白い花がぎっしりと咲き、葉が見えないほどだった。 『赤毛のアン』 第4章 「緑の切妻屋根」の朝 (A huge cherry-tree grew outside, so close that its boughs tapped against the house, and it was so thick-set with blossoms that hardly a leaf was to be seen.) |
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アンはこの桜を「雪の女王」と名付けました。詩人としての心を持つアンらしいですね。家の左右はりんごとさくらんぼの果樹園になっている----果樹園の桜と野生の桜の両方が原作に現れ、全編を通して島の生活の美しさ、春を迎える喜びを象徴します。 | |
もし今夜いらしてくださらなかったら、線路をおりて行って、あのまがり角の所の、あの大きな桜の木(that
big wild cherry-tree)にのぼって、一晩暮そうかと思っていたんです。 『赤毛のアン』 第2章 マシュゥ・クスバートの驚き
(I
had made up my mind that if you didn't come for me to-night I'd go
down the track to that big wild cherry-tree at the bend, and climb
up into it to stay all night.) |
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「あの曲がり角」。 曲がり角に立つと良く見えてくるものがある---この言葉が最終章の「曲がり角をまがった先になにがあるかは、わからないのよ。でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの」と重なります。 その通り、アンにとって一番良いものが、良いものにする価値のあるものが用意されていました。 日本人は、桜を薄いピンクの花ととらえがちですが、りんごの花の色と見まがうほどの白い桜は、北国の桜。 清冽な美しさ、そして儚ささえも漂わせます。 桜の花言葉は「精神の美しさ」「教育」。 アンの未来を彷彿とさせる言葉です。
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