ななかまど

 ナナカマド Mountain ash (Sorbus バラ科ナナカマド属) 

樹高10m足らずの落葉樹。幹は桜に似た赤茶色。写真にあるように羽状の葉が対生します。
春の終わりに、バラ科の植物そのものの花姿をした白い花が、かたまりになって咲きます。夏の季節の先兵。

秋には実が赤く熟し、青い空との対比が美しく、葉が落ちて雪を被った姿が見られることもあります。那須ではその赤い果実(実)を観賞するためか、街路樹に植えこまれていて、その道をドライブするのは 秋の大いなる楽しみ。
「七度かまどに入れても燃えない」ことからナナカマドと名付けられた、と称せられることもありますが、そんなことはありません。ノコギリで簡単に剪定できますし、焚きつけとしても有用です。
ただし、「炭化しにくい」、「燃えにくい」と信じられていることから「雷除け」の木として知られ、住宅の庭に植えられることも多いようです。
例にもれず我が家も南面に植えていますが、標高がやや低いことから(425m)、紅葉がもう一つなのが残念。

 この2週間というもの、アンは目がさめてさえいれば、 一分一秒を楽しんで過ごした。もう家の近くの木や、藪とは全部近づきになったし、ひと筋の小径がりんごの果樹園の下を通って、細長い森につづいていることも発見した。アンはその小径のはずれまでぶらぶら歩いて行き、小川や橋、の茂みや野生の桜のアーチ、しだがおい茂っているかたすみや、やななかまど(mountain ash)の枝がさしかわす細道などを楽しんだ。
          『赤毛のアン』 第9章  レイチェル・リンド夫人あきれかえる

Anne had made good use of every waking moment of that fortnight. Already she was acquainted with every tree and shrub about the place. She had discovered that a lane opened out below the apple orchard and ran up through a belt of woodland; and she had explored it to its furthest end in all its delicious vagaries of brook and bridge, fir coppice and wild cherry arch, corners thick with fern, and branching byways of maple and mountain ash. )
 

  ナナカマドの白い花 (庭で)
  塊りの花は、虫が止まりやすいのです。
 

  磐梯山の麓で ミヤマナナカマド

 セイヨウナナカマド (1012年8月 スイス)
          
European mountain ash
 

   庭のトネリコ(モクセイ科)(Aah)
   葉(羽状複葉)が似ています。

ながながと引用したのは、アンがグリーンゲイブルスに引き取られてきてから二週間の間、なにに一番心を惹かれたのかを感じるためです。
一日いちにち、アンが土地に根をおろしていく。その喜びが、単純なようにも思える自然描写を通じて表現されていませんか。
作者の嗜好が主人公に投影されていると思える自然描写が続くのを、憧れと共に読み進んだ過去を思い出します。
島の四季の変化のすばらしさに感激したのでした。
桜の花が咲く時期には、ナナカマドはまだ新芽を吹いたばかり。桜の木の幹に似た赤茶色の幹に、行儀悪く枝が伸び、その枝と対生する羽毛のような葉の連なりがあいまって、「枝をさしかわす」という表現がなされたのでしょう。
もう少しで白い花が咲くはずです。アンはその花を見てどんなに嬉しかったか・・・。さらに、秋には真っ赤な果実がなり、葉もまた紅葉する・・・。 
アンにこう言わしめた島の秋の美しさを、思い描くだけで心がときめきます。

葉がモクセイ科のトネリコ(Ash)に似ていることから、ナナカマドの英名はMountain ash。