万葉の植物 ふじばかま  を詠んだ歌
                             2011.8.19 更新            

 

    
    茎に赤みがあることから、セイヨウフジバカマ             葉は三裂する
 

   ふじばかま (万葉表記  藤袴)     フジバカマ  (キク科)

キク科の多年草。。秋の七草のひとつとして有名です が、集中1首しかありません。秋の終わりにふさわしい香り高い花なのに、萩など秋の花に比べて冷遇されているのが不思議です。
花期は10月。淡紅紫色の花を咲かせます。写真はセイヨウフジバカマ。園芸品種もしくは交配雑種でしょう。奈良時代以前に渡来した自生種を見かけることは少なくなりました。

唐の時代には、香草として珍重されたようです。
それもそうです。試しに茎を折り取り、3日ほど陰干ししてみてください。言うも言われぬ良い香りが漂います。この香りは桜餅の桜の葉の香り(オオシマザクラ)---クマリンの香りなのですね。
昔の人は、この半乾きのフジバカマの香りを着物に移して楽しみました。匂袋を作ってみるのも面白そう。

藤袴」は『源氏物語』五十四帖の第三十第の名前です。玉鬘十帖のうちの第九帖。
巻名は夕霧の中将が詠んだ和歌 
 同じ野の 露にやつるる藤袴 あはれはかけよかことばかりも」 に因みます。
亡くなった大宮は二人の祖母なのですから、夕霧と玉鬘は同じ藤色の喪服を着ています。夕霧はいとこの縁に事寄せて玉鬘に秘めた思いを伝えます。この時の藤袴は生なのか半乾きなのか、興味あ りませんか。

フジバカマはキク科フジバカマ属。同属のヒヨドリバナやサワヒヨドリとの見分けは非常に難しく、葉に違いがあるとはいうものの、遠目に判別するのは至難のわざ。
シロバナフジバカマ(白花藤袴)やユーパトリューム(白やうす紫 )、セイヨウフジバカマ、マルバセイヨウフジバカマ、サワヒヨドリ、ヨツバヒヨドリと似た花があり、オトコエシと言ったよく似た花も咲き乱れる秋の初めには、頭を悩ます日々が続くのです。
 

集中1首のみ。

 
萩の花 尾花葛花なでしこの花を みなへしまた藤袴朝顔の花    山上憶良 巻8-1538 
  
                 
   
七草の花の咲く順は。(新暦で)
山萩は、6月の梅雨の頃から仲秋まで。ついで河原撫子。朝顔の花(現在の桔梗)。女郎花と薄と葛は同じ時期から(8月中旬から晩秋まで)。遅れて藤袴(10月下旬)。
 掉尾を飾るのにいかにもふさわしい高貴な花です。