すみれ  

       スミレ  Violet (Viola)   スミレ科スミレ属

島の代表的なスミレは、Blue violetとWhite violet。
          (
Field Guide to Wildflowers: Eastern Region
Blue violetは薄く青みを帯びた紫色の花を咲かせ、心形の葉ははじめ丸く巻いていて、日本の早春に咲く「アオイスミレ」に似ています。
White violetは花びらの下部に紫色のすじが入った白い花を咲かせます。
このWhite violetですが、紫色のすじの色や濃さは個体によっても差があり、時に真っ白な花があるかと思えば、まるで笑っているかのような目立つすじを持つ株もあるくらいです。

    紫水晶って、おとなしいすみれたちの魂(souls of good violets)だと思わない?」 
          『赤毛のアン』 第13章 待ちこがれるピクニック

 (Will you let me hold the brooch for one minute, Marilla? Do you think amethysts can be the souls of good violets?" )

      「すみれの谷(Violet Vale)」や「樺の道」を通って行くのはロマンチックだった。 
        『赤毛のアン』 第15章 教室異変

  (---but to go by Lover's Lane and Willowmere and Violet Vale and the Birch Path was romantic, if ever anything was. ---)

     さんざしの次はすみれ(the violets)で、「すみれの谷」は一面の紫だった。 
       『赤毛のアン』 第20章 行きすぎた想像力

(After the Mayflowers came the violets, and Violet Vale was empurpled with them. Anne walked through it on her way to school with reverent steps and worshiping eyes, as if she trod on holy ground. )

    タチツボスミレ
 福島県・滝桜の麓に咲いていました。

  アオイスミレ
  この花が咲くと、いよいよ春。
  下の「ビオラ・ソロリア」に似ていませんか?

   ニオイタチツボスミレ
 名前の通り、良い香りがします。

    アケボノスミレ  あけぼのすみれ
 

『赤毛のアン』 には、「すみれ」がでてくる場面が8回 あるのです。
ほとんど紫色のすみれを語り、すみれに象徴される春の美しさを表現しています。
パンジーが一年草なのに対して、このスミレは多年草。
姿形に似合わず性質は強健で、谷一面が紫に染まるほど、繁殖することもあります。
忘れてはならないことがもうひとつ。
『アンの青春』のなかに、アンを「芯に紫色の縞が入っている白すみれよ」となぞらえる場面があります。
(『アンの青春』第13章 )あるいはこのWhite violetをイメージしたのかもしれません。

すみれの花言葉は、「愛情、「つつましさの価値」。

ところで、スミレの巧妙な繁殖作戦についてお話しておきましょう。
スミレは、蟻にとって魅力的な食べ物を種と一緒に作り出します。それは種枕(しゅちん エライオソーム Elaiosome )。
けまんそうのページで紹介しましたが、蟻はこの栄養満点のエライオソームが大好き。
種が弾けて地面に落ちると、蟻は巣に持ち帰り、白いエライオソームの部分を食べて、残った種は巣の外に放り出すのでした。これが、庭のあちこちからスミレが発芽してくるという仕組みなのです。
蟻は栄養に富むエライオソームを獲得し、種子は発芽能力を失うことなく場所を移動できて、新しい土地で繁殖できますね。
双方が利益を得ることから、蟻とスミレは双利共生の関係にあると言えます。 
この方法で種子を散布する植物を「アリ散布植物」と呼びます。
日本におけるアリ散布植物は、スミレ属、イチリンソウ属、フクジュソウ属、ミスミソウ属、キケマン属、クサノオウ属、エンレイソウ属、カタクリ属など200種類以上あるのです。
ケマンソウもスミレも春早く咲くカタクリも、蟻に繁殖の役目を担ってもらい、テリトリーを広げて行きます。
長いこと植物観察を続けていますが、スミレのような事例に当たると、時に植物は考える力を持つ!と妙に納得することがあるのです。
最近、日本でよく見られるスミレに「ビオラ ソロリア」(Viola sororia 別名:アメリカスミレサイシン)があります。
北アメリカ原産の帰化植物で、このスミレが島のスミレによく似ています。↓↓↓
 

 ビオラ・ソロリア (アメリカスミレサイシン)

 北アメリカ原産の外来種。 強健な性質を持つ。
 日当たりと水持ちの良い土地が好き。
  島のBlue violetは、おそらくこんな花なのでしょう。