万葉の植物 つまま を詠んだ歌
                                2012.12.19 更新         

 

    
                       アボガドと親戚、食用になります。

   つまま (万葉表記  都万麻)      タブノキ (クスノキ科)

つままは、現在の「マツ」、「イヌツゲ」、「タブノキ」説がありますが、家持の歌の「神さびるほどの大木」から、現在はタブノキと考えられています。
タブノキは、クスノキ科。暖地の海岸に生える常緑高木。北限は秋田県なので家持の赴任地・高岡にも生えていたのでしょう。
シイ・カシとともに、照葉樹林の代表樹的樹種のひとつで、各地の神社の鎮守の森によく大木として見られます。高さは20mほどに、幹の太さも1mに達する場合があり、古くは船材として利用されました。犬楠、玉楠、浜椿の別名を持ちます。
葉は互生で枝先に集まり、花は黄緑色。一見ユズリハに似た円錐花序の花を春に咲かせます。
夏の終わりに写真のような丸く黒い果実が熟し、これは鳥の好物。種子散布されるせいか、古くから天より降る木と言われています。枝葉には粘液が多く、乾燥させ粉にすると線香や蚊取線香の材料として利用価値があります。これはクスノキと同じですね。また、樹皮は染料として大事なものでした。

八丈島で織られる「黄八丈」は、タブノキの樹皮を染料として利用したものです。
集中1首のみ。
  
  礒の上のつままを見れば根を延へて年深からし神さびにけり  大伴家持 巻19-4159
(神さびるとは神々しくなること。天平勝宝2年3月9日、澁谿埼(今の高岡市)で、巌の上に生えているつままを見て詠んだ歌。根を伸ばし大木になり、樹冠を広げこんもりと茂ったつままの樹が目に見えるようです。)
(家持が国守として出挙(すいこ)の状況を視察するときに都と異なる風景に感興を覚えて作った歌。出挙とは「民に官が金や物を貸し付けて、その後利子をつけて編纂させる制度。春種籾を貸付け、秋の収穫後に返済させました。ところがその利率は5割から10割。高利ですね。)