万葉の植物 にこぐさ  を詠んだ歌
                               2012.12.22 更新          

 

     
              ハコネシダ                                                            アマドコロ


   
にこぐさ (万葉表記 爾古具佐 和草 似児草 爾故具佐)   
    
ハコネシダ (ウラボシ科)  柔らかい草の総称

和草(にこぐさ)が現在のどの植物に当たるのか、くつかの説があります。

1. ハコネシダ (箱根羊歯 )
2. アマドコロ (甘野老 ユリ科)
3. 柔らかい草

葉や茎の柔らかい草。それが踏みしだかれたり風になびいたりする姿を、恋しい人の姿に重ねています。またにこ = 笑う、にっこりすることから「にこよか」を導く序詞としても遣われます。
 
集中4首。

 葦垣の中の和草にこやかに我れと笑まして人に知らゆな     作者不詳 巻11-2762
   (にこ草のにこやかに --- 笑まして。)

 あしがりの箱根の嶺ろのにこ草の花つ妻なれや紐解かず寝む  東歌 巻14-3370

 射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の身の若かへにさ寝し子らはも    作者不詳 巻16-3874

 秋風に靡く川辺のにこ草のにこよかにしも思ほゆるかも      大伴家持 巻20-4309 

(天平勝宝6年(756年)七夕の夕に、大伴家持が天の川を仰ぎ見て詠んだ歌のひとつ。詩人は星の気持ちになり、天の川のほとりに生えるハコネシダをも思い浮かべているのです。)