万葉の植物   やまたちばな を詠んだ歌
                         2010.4.14 更新

 
  

  やまたちばな  (万葉表記   山橘 夜麻多智婆奈)   ヤブコウジ (ヤブコウジ科)

ヤブコウジ。ヤブコウジ科の常緑小低木。背の高さは15センチから20センチくらい。初夏白淡色の花を下向きに付け、実が晩秋に赤く 熟すと、やおら存在感を増す植物。斜めに差し込む冬の弱い日の光に、丸い実が照り輝く様子に目が止まります。実は春まで落ちない ので霊力のあるめでたい植物とされ、正月飾りに使われます。
葉が橘の葉に似ているそうですが、いかがでしょう。
赤い実が緑の葉陰に目立つので、色に出る、実が照ると言った表現が遣われました。
良く似た植物に、マンリョウ(万両)、センリョウ(千両)、があり、このヤブコウジは十両と呼ばれていますね。
更にアリドオシ(鋭い棘があり、同じく小さくて赤い実が 付く)を揃えて、「万両、千両、十両有り通し」と欲張ってみますか。
                     
 

あしひきの山橘の色に出でよ語らひ継ぎて逢ふこともあらむ             春日王 巻4- 669

この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の光るも見む                大伴家持  巻19-4226  

あしひきの山橘の色に出でて我は恋ひなむを人目難みすな             作者不詳  巻11- 2767

紫の糸をぞ我が搓るあしひきの山橘を貫かむと思ひて                作者不詳   巻7-1340

消残りの雪に合へ照るあしひきの山橘を裏(つと)に摘み来な           大伴家持  巻20-4471