万葉の植物  やまたづ  を詠んだ歌
                           2010.5.23 更新                  

 
    
   やまたづ (  万葉表記 山多豆 山多頭)    ニワトコ (スイカズラ科)    

スイカズラ科の落葉低木。
新芽の展開が早く、日当たりの良い林縁に、いちはやく緑の新芽を伸ばすので、早春の山地で目を引きます。
那須野では4月終わりに、やや黄みがかった白い花を房になって咲かせます。
写真のように、葉は奇数羽状複葉で「対生」します。葉が対生することから、「迎へ」の枕詞として使われました。
「やまたづ」は「山をたずね回って」の意味になりますね。ニワトコの枝、葉、花の煎液は、骨折や打撲の治療に効果的です。だから和名は「接骨木(ニワトコ)」。
常に庭にあるべき植物=「庭常(にわとこ)」でしょうか。開花から早くもひと月あまりで実は赤く熟し始め、フラボノイド類をやビタミンA、ビタミンCを豊富に含むことから、焼酎に漬けたり乾燥果実に加工したりして、いまや健康食品として注目されています。

ヨーロッパでは「エルダーベリー」と呼ばれ、ローマ時代から万病に効く民間薬として、あるいはワインの香り付けとして使われ、珍重されてきています。         
 

 君が行き日長くなりぬ山たづの迎へを行かむ待つには待たじ    衣通王 巻2-0090

 白雲の龍田の山の露霜に色づく時に----竜田道の岡辺の道に丹躑躅の 薫はむ時の桜花咲きなむ時に山たづの 
  迎え参ゐ出む君が来まさば (長歌)           高橋蟲麻呂     巻6-0971