万葉の植物   うも   を詠んだ歌
                           2010.9.13更新

 
   
     サトイモ                 ハス
    うも (万葉表記    宇毛 )      サトイモ  (サトイモ科)   (右の写真はハス)

熱帯原産。茎の地下部分(塊茎)を食用とする。葉柄はズイキとして利用。 京料理に使われる海老芋、耐寒性のあるエグイモ、親芋が太り小芋ができないタケノコイモ(筍芋)などの種類があります。

タロイモの1種でもあり、このタロイモは、サトイモ科サトイモ属の植物のうち根茎を食用とするため栽培されている種の総称。
サトイモはイネ以前、縄文以前に南方民族が日本に渡来すると時を同じくして伝わったようです。
山に自生するヤマイモ(山芋)に対し、里で栽培されるサトイモ(里芋)。サトイモはまたイエツイモ(家つ芋)の別名も。デンプンが主成分。食物繊維が豊富、ぬめりはムチン(消化促進、潰瘍の予防効果)、ガラクタン(免疫力向上)。
カリウムを多く含み、カロリーはサツマイモの約半分。栄養素に偏りがあり、主食となりにくい。 それだけにイネや他の穀類ほど信仰と結びついていないが、深く日本列島に根付き存在感を持ちます。
「うも」と「いも」。「有毛」と「伊母」。 音韻転訛したようです。

説明書きよりも、身近なのは:
・芋煮会 ----小芋や孫芋ができることから、子孫繁栄の縁起物とされているサトイモを使った秋の行事、我が家の風物詩ですね。
・いもたこなんきん --- 女性が好きだといわれるが、なぜここに「タコ」が入るのか? んんん--。
・いも --- 田舎っぽくて垢抜けない様子。
・芋の子を洗う --- 里芋をぎっしり詰め込んだ桶に木の板を差し込んでかき回し、芋同士の摩擦を利用して皮を剥くこと、転じて狭い場所に沢山の人が集うこと →→→ 里芋水車。
・芋の葉を倒すほどの風を「芋嵐」と言うらしい。台風なのでしょうか。

旧暦8月15日は、中秋の名月。別名「芋名月」と呼ばれ 、農耕儀礼の神事として月に里芋を手向けます。今年(2010年)の名月は9月22日。 古来の習俗を探るよすがとして収穫の季節到来を祝いたいですね。
那須の野にはススキの穂が出揃い、初秋の風に揺れています。
遠く目を放つと那須山が、会津の山から続く空のもとに端座しているのです。
夜涼の宵、月見団子や里芋や薄の穂をお供えして秋の収穫を喜びます。

    芋の葉にこぼるる玉のこぼれこぼれ小芋は白く凝りつつあらむ 
   長塚
        清新の気あふれる1首。 凝りつつある小芋はおのれの姿の投影なのか。

季節は戻りますが、七夕に「こぼるる玉」(葉に溜まった朝露)を集めて墨を擦り、七夕飾りの短冊に書き付けると字が上手になるという言い伝えもありますね。
古代、里芋の葉は、蓮の葉に似ていて、降臨する霊威が宿る葉とされていたようです。
 
   
 芋の露連山影を正しうす   飯田蛇笏
        俳句初学の頃に出合い、蛇笏の句の格調や声調の高さに、わがぼんくら頭に絶望した思い出の句。
   

集中1首
  蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家なるものは芋の葉にあらし   長忌寸意吉麻呂  巻16-3826
 (意吉麻呂さん。糟糠の妻を「芋の葉」扱いするのは可哀相。愛情表現なのですか?)