梅にうぐいす
春されば 木末隠りて鴬ぞ鳴きて去ぬなる梅が下枝に 小典山氏若麻呂 巻5-827
梅の花 散り乱ひたる岡びには 鴬鳴くも春かたまけて 大隅目榎氏鉢麻呂 巻5-838
我がやどの 梅の下枝に遊びつつ 鴬鳴くも散らまく惜しみ
薩摩目高氏海人 巻5-842
梅の花 散らまく惜しみ我が園の 竹の林に鴬鳴くも
作者不詳 巻5-824
月の光と梅 --- 夜の闇に香る梅が恋しい人を思わせ、古を思い亡くなった人を偲ばせる。
闇ならば うべも来まさじ梅の花 咲ける月夜に出でまさじとや
紀女郎 巻8-1452
我が宿に 咲きたる梅を月夜よみ 宵々見せむ君をこそ待て 作者不詳 巻10-2349
雪の上に 照れる月夜に梅の花 折りて送らむはしき子もがも 大伴家持 巻18-4134
久方の 月夜を清み梅の花 心開けて我が思へる君
紀女郎 巻8-1661
雪の上に 照れる月夜に梅の花 折りて送らむはしき子もがも 大伴家持
巻19-4134
白梅か紅梅か --- 万葉の時代には、紅梅が伝わっていない。
雪の白さと梅の花。花びらを雪と見る。
馬並めて 多賀の山辺を白栲に にほはしたるは梅の花かも 作者不詳 巻10-1859
雪の色を 奪ひて咲ける梅の花 今盛りなり見む人もがも 大伴旅人 巻2-850
我が園に 梅の花散るひさかたの 天より雪の流れ来るかも 大伴旅人 巻5-822
山高み 降り来る雪を梅の花 散りかも来ると思いつるかも 作者不詳 巻10-1841
我が背子に 見せむと思ひし梅の花 それとも見えず雪の降れれば
山部赤人 巻8-1426
香りを愛でる --- 香りを美しさにたとえる
梅の花 香をかぐはしみ遠けども 心もしのに君をしぞ思ふ 市原王
巻20-4500
奈良の京に咲く梅は、格別な思いを寄せられる。
梅柳 過ぐらく惜しみ佐保の内に 遊びしことを宮もとどろに 作者不肖
巻6-949
霞立つ 春日の里の梅の花 山のあらしに散りこすなゆめ 大伴村上
巻8-143
若き日の家持の歌。
君が行きもし久にあらば梅柳 誰れとともにか我がかづらかむ 大伴家持
巻19-4238
鴬の 鳴き散らすらむ春の花 いつしか君と手折りかざさむ
大伴家持 巻17-3966
野に遊ぶ
遊宴が行われる。梅の枝を髪に挿し、花を杯に浮かべて楽しんだ。
遊ぶとは、心を楽しませること。
神楽をあげる、琴を弾じる、笛を吹く、歌を歌う、野山へ行くなど、すべて日常からはなれ体や心を休め楽しませること。
ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる 作者不詳 巻10-1880
青柳 梅との花を折りかざし 飲みての後は散りぬともよし 笠沙弥 巻5-821
年のはに 春の来らばかくしこそ 梅をかざして楽しく飲まめ
大令史野氏宿奈麻呂 巻5-833
酒杯に 梅の花浮かべと思ふどち 飲みての後は 散りぬともよし 大伴坂上郎女
巻8-656
そして散る梅
鴬の音 聞くなへに梅の花我家の 園に咲きて散る見ゆ 対馬目高氏老 巻5-841
我が園に 梅の花散るひさかたの 天より雪の流れ来るかも 大伴旅人 巻5-822
いつしかもこの夜の明けむ鴬の木伝ひ散らす梅の花見む 作者不詳 巻10-1873
梅の花 咲きて散りぬと人は言へど 我が標結ひし枝にあらめやも 大伴駿河麻呂 巻3-400
菅原道真の歌2首
うつくしや 紅の色なる梅の花 阿呼が顔にも つけたくぞある この時5歳 紅梅が伝わっていたようです。
東風吹かば 匂ひをこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ (大宰府に
左遷される時、延喜元年・901年) |