万葉の植物      うけら を詠んだ歌
                           2010.4.14 更新

 
    
    うけら (万葉表記 宇家良)      オケラ (キク科

日当たりの良い林の外れなどに自生しています。秋の初めにやや紅味がかった薄白い頭花を咲かせ、魚の骨にも似た目立つ苞葉 を持っているのが特徴です。
新芽は美味らしく、俚諺に「山でうまいはオケラとトトキ」とあ ります。「トトキ(ツリガネニンジン)」は食したことがありますがオケラはまだ。もっとも、那須に自生する個体数が少ないので、犠牲にする勇気は無いでしょう。
[おけら参り] 京都の八坂神社では大晦日から元旦にかけておけら参りが行われます。 
乾燥した茎根を燃やしたおけら火を、火縄に付けてくるくる回しながら家に持ち帰り、その火を使って雑煮を作ると新しい年の無病息災が約束されるという行事。根は漢方の健胃薬。屠蘇散の主薬
と聞けば思い出す臭いでしょうか


『万葉集』ではこの「オケラ」は、目立たず変わらない姿で咲く花として詠まれ「オケラの花のように顔色に出すな、人に知られるな」という表現が使われて いて、3首いずれも巻十四に東歌として収められています。
 
 恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に出なゆめ          東歌    3376 

 我が背子を何どかも言はむ武蔵野のうけらが花の時なきものを        東歌    3379

 安齊可潟潮干のゆたに思へらばうけらが花の色に出めやも           東歌      3503 



  これが 「トトキ」。別名ツリガネニンジン。