万葉の植物   うはぎ  を詠んだ歌
                             2012.5.1更新

 

     
      ヨメナ                        ムコナ(シラヤマギク)

   うはぎ  (万葉表記   莵芽子 宇波疑  嫁菜)     ヨメナ (キク科)

ヨメナは本州、中部地方以西から四国・九州に分布します。道端や田の畔などやや湿った場所を好んで生え、高さは50〜100センチくらい。葉は長楕円形で縁に粗い鋸歯があり互生します。 長く強靭な地下茎で増えるので、雑草として退治するのは大変な作業。
秋の初めから中秋にかけて直径3センチほどの淡青紫色の花を咲かせます。
写真左はは関東ヨメナ。関東から東北にかけて見られます。本来のヨメナに比較してやや花が小さいのが特徴。
花姿の良く似たノコンギクに比べ、黄色い筒状花の冠毛が非常に短い ---- しかし弁別は難しく、大雑把に「野菊」と呼ばれることもあります。
触るとノコンギクの葉はざらざら。対してヨメナの葉はしなやかですべすべ。
春の若芽は食用となり、「嫁」と冠してあるように優しげなうえに美味なことが名前の由来となっています。--- きっと名づけ親は男性?
現在もお浸し、天ぷら、胡麻和えなどで食されます。春の味ですね。
ヨメナはムコナ(シラヤマギク)に対応する名前。万葉時代には 「うはぎ」、平安時代にはいると「おはぎ」と呼ばれていたようです。
 
集中2首。

 妻もあらば 摘みて食げまし沙弥の山 野の上のうはぎ過ぎにけらずや  柿本人麻呂 巻2-221
(現在の香川県坂出市の海岸の、岩の間に倒れている死人を見て人麻呂が詠んだ歌。妻も無く死人の周囲にうはぎが生い茂ることよ。生と死の対比。)

 春日野に 煙立つ見ゆ娘子らし 春野のうはぎ摘みて煮らしも    作者不詳 巻10-1879
(万葉びとにとって、ヨメナは女性が摘む野草というイメージが定着していました。それも若い女性が。ヨメナを摘む姿はさぞかし春の野にふさわしいものだったことでしょう。野に出て若菜を摘んで食べることは春の楽しみ。)