万葉の植物  つた つな  を詠んだ歌
                         2011.12.16 更新                

 

                         テイカカズラの斑入り園芸種 
     つた  いわつな (万葉表記 都多 津田 岩綱)  テイカカズラ(キョウチクトウ科) 

つる性常緑の定家葛(テイカカズラ)。木本です。6月頃に5弁の白い花を咲かせ、次第に淡黄色になります。
万葉人は一年中緑を絶やさず、力強く伸び続ける生命力を愛でました。
つたの名前は、他の植物や地面を「つたって」生長することから取られました。
テイカカヅラの名前は、謡曲「定家」から来ていると言う説、あるいは「庭下」で木や石に絡んでいることからという説があります。

謡曲「定家」のあらすじ:
平安時代の末期、後白河天皇の第三皇女式子内親王(しょくしないしんのう)は、幼くして賀茂斎院となり神に奉仕していました。歌人として名のある藤原定家は、式子内親王を恋い慕い、病没した皇女をなおも慕い続けます。死後定家は蔦葛に生まれ変 わり、皇女の墓にからみついた --- ツタをテイカカズラというようになった。
 
 つのさはふ  石見の海の言さへく唐の崎なる.......(長歌)     柿本人麻呂 巻2-135
(ツタは枝分かれしながら生長します。このことから「別れ」を導く枕詞として用いられました。
     人麻呂が石見の国から大和へ上る時、妻との別れを悲しんで詠んだ長歌)

 岩綱の また変若ちかへりあをによし奈良の都をまたも見むかも     作者不詳 巻6-1046
(ツタの蔓は次々に新しく伸び続ける。そのツタのように若返ってまた奈良の都を見たいものだ。このころ都は久邇京(恭仁京)にありました。奈良時代には、久邇、紫香楽など平城京以外にしばしば 遷都されました。
                  (久邇京は天平12年<740年>12月から天平14年)。)

 父母が 成しのまにまに箸向ふ  弟の命は.......(長歌)         作者不詳  巻9-1804

 み吉野の 真木立つ山に青く生ふる  山菅の根の.......(長歌)      作者不詳 巻13-3291

 もののふの  八十伴の男の思ふどち 心遣らむと.......(長歌)      大伴家持 巻17-3991

 海神の 神の命のみ櫛笥に  貯ひ置きて斎くとふ.......(長歌       作者不詳 巻19-4220