万葉の植物  つぎね  を詠んだ歌
                             2011.3.12 更新            

 

     
        ヒトリシズカ                  フタリシズカ


   
つぎね (万葉表記  次嶺 )  ヒトリシズカ   フタリシズカ
                           (センリョウ科センリョウ属またはチャラン属)

センリョウ科センリョウ属のヒトリシズカ(一人静)か、あるいはフタリシズカ(二人静)という説があります。
両方ご紹介しましょう。
両方ともやや暗く湿気のある林床に生えます。
ヒトリシズカがまず4月に短い白い穂状花を付けたあと、遅れて5月、フタリシズカが長い花穂を2本伸ばし、白く丸い花を咲かせます。
ヒトリシズカの葉は4枚の葉が輪生状に見えるのに対し、フタリシズカの葉は対生。
ヒトリシズカの高さ20センチに対して、フタリシズカはそれより大きく、場所によっては1メートル近くにまで生長することもあります。
共通するのは、「シズカ」ではなく群生すること。根は腫れ物、できものの薬として用いられていました。

裏庭に植えていますが、群生するまでに到らず、いまだに10本ほどしか
群れてくれません。
里山の春、萌えはじめたコナラやクヌギの下に群生し、花穂が揺れて木漏れ日に光るさまを目にすると、春の喜びに心が満ちる思いがするのです。
フタリシズカの名前は、静御前の亡霊が舞う、能の「二人静」に由来します。
 
集中1首のみ。

 
つぎねふ 山背道を 人夫(ひとづま)の 馬より行くに 己夫(おのづま)し 徒歩より行けば 見るごとに  音のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領巾(あきづひれ) 負ひ並め持ちて 馬買へ我が背
                                作者不詳 巻13-333
  

(「山城・山背・やましろ」を導く枕詞として「つぎねふ」と詠まれています。山背道とは、奈良から山城の国への道。  愛する夫が山道を苦労して歩くと想像するだけで、涙が流れます。母の形見として大事にしていた「まそみ鏡」と「蜻蛉領巾」を差し上げます。これで馬を買いなさいあなた様。 )