万葉の植物 すもも  を詠んだ歌
                              2011.4.29 更新           

 
  
   すもも  (万葉表記  李 酢桃 須毛毛 桃李 )      スモモ ( バラ科)

中国原産の落葉小高木。早春、遠くの山にまだ雪が残っている時期に花を咲かせます。
上掲の写真を撮った日も、やはり遠嶺に雪が。山桜よりも2週間ほど早く花を見せてくれることから、万葉びとは梅とは違った意味で春の到来をいち早く知るための花だったようです。---- 春はスモモの花と同時に、でしょうか。
梅雨の終わりごろ、実は黄色や赤紫色に熟します。最近では赤く大きな、甘味の強い種類が栽培されているようですが、ここ那須では昔のまま名前の通りの「すっぱいスモモ」が主に植えられていて、熟しても誰も見向きもせず、落果するばかり。

「桃李もの言わざれど下おのづから蹊をなす」「李下に冠を正さず」「桃李門に満つ」「桃李の粧」   
桃と李は中国で春の景物として称され、漢詩文によく詠まれれています。(広辞苑より)


   天平勝寶二年三月一日の暮に、春の苑の桃李の花を眺めて作る2首のうち、
  わが園の 李の花か庭に降る はだれのいまだ残りたるかも         大伴家持  巻19-4140
  
(もう1首が 
 春の苑 紅にほふ桃の花 下照る道に出でたつ少女   大伴家持 巻19-4139
(桃と李を同時に詠む。これは中国で詩文に取り入れられ春の叙景としての代表の植物。
    越中守として赴任し、妻(坂上大嬢)と一緒にいた春の夕暮れの歌。
    家持の歌心は、この春苑桃李の歌をものにしたあと、独自の境地に達するべく発展していきます)

 我が園に 梅の花散るひさかたの 天より雪の流れ来るかも           大伴旅人       巻5-822 
 妹が家に 雪かも降ると見るまでに ここだもまがふ梅の花かも  小野国堅    巻5-844 
  (父親である大伴旅人の歌が意識の底にあったことでしょう。)