万葉の植物  しばくさ  を詠んだ歌
                             2011.8.19 更新       

 
  
   しばくさ  (万葉表記  志波草 芝草 )    チカラシバ   (イネ科)

田んぼの畔道、舗装していない田舎道、堤防など、日当たりの良い乾燥気味の場所に好んで繁殖する多年草。
高さは60〜80センチ。オオバコにも似た強い生命力を持ちます。
夏の終わりから秋にかけて、50センチ以上もの花穂を伸ばし、先端に右写真のような
剛毛に包まれた小穂を多数つけます。季節が進むにつれ1本1本の小穂が開き、その形はまるでビン洗いのブラシそのもの。
果実が熟すと先端の毛と一緒にはずれ、そこを通りかかった動物や人間に引っかかる、つまり「引っ付き虫」化するわけです。

試しにこのチカラシバと力比べをしてみてください。めったなことでは勝てません。
やや紫がかった花穂が、秋の透明な光を浴び揺れながら輝いている様子は、季節の到来を告げる風物詩。
横溢する生命力をを感じさせてくれる「力強い」芝です。

 たち変り 古き都となりぬれば 道の芝草長く生ひにけり    田辺福麻呂     巻6-1048
(天平12年(  740年)、聖武天皇は恭仁京(現在の京都府木津川市)に奈良から遷都。奈良の都は寂れ、宮人たちが朝夕通っていた道もすっかり荒れてしまいました。 寂れたという事実を、しばくさが生い茂ると表現する---当時の人は植物をごく身近に感じていたのでしょう。)

 畳薦 へだて編む数通はさば  道の芝草生ひずあらましを   作者不詳      巻11-2777