万葉の植物  さはあららぎ   を詠んだ歌
                              2012.8.31 更新           

 

         

   さはあららぎ (万葉表記  澤蘭 )      サワヒヨドリ  (キク科)

日当たりの良い山野や湿地に自生。高さは40〜1m。花期は8月から10月。葉は対生し茎の頂部以外は枝分かれしません。
ヒヨドリバナ、サワヒヨドリ、フジバカマ、ヨツバヒヨドリとこの4種は良く似ていて弁別に苦労します。
サワヒヨドリはヒヨドリバナに較べて小型。茎に赤味があり、輪生する葉を持つことがある。
フジバカマは葉の中に三裂するものがある。
ヨツバヒヨドリは短い葉柄があり名前の通り、輪生する4枚の葉が特徴。

こんなことを指針にしますが、この時期野原に群れ咲く花は、ひとくくりに「ヒヨドリバナ」仲間、と認識してしまい通り過ぎることも。おまけに「オトコエシ」なる花も咲いていて---。
このあと、ヨメナ、関東ヨメナ、ノギク、リュウノウギク、ノコンギク、コンギクと咲き続ける秋がやってきます。
 

集中1首に見られます。

天皇大后共に大納言藤原家に幸す日にもみてる沢蘭一株抜き取り内侍佐々貴山君に持たしめ大納言藤原卿と陪従の大夫等とに遣し賜ふ御歌一首 命婦誦みて曰く

 この里は 継ぎて霜や置く夏の野に 我が見し草は もみちたりけり  孝謙天皇 巻19-4268                       

(この里は1年中霜が降りるのだろうか 夏の野で私が見た草は 色づいていた。孝謙天皇の父は聖武天皇。母は藤原氏出身の光明子。皇太子時代は阿倍内親王と呼ばれていた。淳仁天皇を経て重祚し、第48代称徳天皇(しょうとくてんのう)(夏に色づいていた。それも霜が置くほどに。これはどういう状況なのか。後ろ盾の藤原仲麻呂の将来を暗示しているのか。)