万葉の植物   さかき    を詠んだ歌
                              2012. 3.28更新

 

     
       ヒサカキ                                  サカキ

     さかき  (万葉表記  賢木)      サカキ (ツバキ科)

ツバキ科の常緑高木。さかき(賢木、榊、神樹)は、上代には、特に神事に用いられる常緑樹の総称でしたが、平安期以後は(写真の)サカキを指すようになりました。
さかきは「栄える木」、あるいは「境木」の意味で、神聖な地に植える木という意味。神道の行事に欠かせません。
葉はツヤのある深い緑色。夏の初め、6月〜7月ごろに白い花を下向きに咲かせます。秋の終わりには、黒くて小さな液果を付けますが、目立たずいつも庭で無視されている実です 。
身近には、神社で神に捧げる玉串として知られています。神社に植栽されているのをよく見かけ、榊の字は国字。
榊に良く似たヒサカキも代用として使われることがあるそうです。
本州の茨城県、石川県以西、四国、九州の山野に自生します。寒さに弱いのでしょうか。この冬の寒さに庭に1本植えてあるサカキが枯れてしまいました。残念です--- 。(神に見放されたか?)
 
 大伴坂上郎女 神を祭るの歌

 ひさかたの 天の原より 生れ来る 神の命 奥山の 賢木の枝に しらか付け 木綿取り付けて 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 竹玉を 繁に貫き垂れ 獣じもの 膝折り伏して たわや女の 襲取り懸け かくだにも 我れは祈ひなむ 君に逢はじかも 
                      (長歌)
 巻3-379 
反歌 
 木綿畳 手に取り持ちてかくだにも 我れは祈ひなむ君に逢はじかも    巻3-380

後注:
天平5年の冬11月をもちて、大伴の氏の神を供祭る時に、いさかかにこの歌を作る。故に神を祭る歌といふ。

家刀自として、大伴家一族の祭祀を司る立場にある大伴坂上郎女が、神を祀る儀礼をいかに滞りなく果たしていたか分かる歌です。しかしこの「君」を、大伴家祖神と取るのかあるいは恋人と考えるのか ---分かりません。
現在も在でも榊に木綿や紙片を取り付け、神の依り憑く神籬(ひもろぎ)としたり、神に供える玉串の料とするなど神事に使われています。