万葉の植物  おもひぐさ  を詠んだ歌
                               2010.6.11 更新               
   
 
           
                                                         煙草つながりで、右はガンクビソウ(雁首草・キク科)

   
おもひぐさ (万葉表記 思草)      ナンバンギセル (ハマウツボ科) 

 日本全土、東南アジア、ロシアに分布する一年草の寄生植物。 山野で見られ、主にススキの根に寄生します が、ミョウガ、サトウキビ、カンナ、アワ、イネの根に寄生することもあります。
茎が短く、目立たない葉も,葉緑素を持たず、全体が赤味の強い褐色。 種で殖えます。
夏の終わりから秋の初めにかけて背丈20センチほどの花茎を伸ばし、先端にうつむきかげんの花を付けます。
オオナンバンギセルは、標高の高い場所に生えますが、この個体は見つけた時点ですでに花の盛りを過ぎていて、どちらなのかが確認できませんでした。 がくの先が尖らず、花冠の列片に細かい歯牙がある(花びらの周り が細かく波打っている)のが特徴です。
そのひっそりした花姿から、もの思う心の序詞として使われ、平安以後「思ひ草」は、「物思いにふける、悩む」「もの苦しい思いでいる」状態の表象として歌に読み込まれました。

「おもひぐさ」の名前は、かもしだす雰囲気で名づけられので、さまざまな植物が該当する可能性があります。
代表的なのは竜胆(リンドウ科)、露草(ツユクサ科)で、ほかにオミナエシ、シオン、ススキなど各説ありますが、現在は歌の情景から連想されるナンバンギセルが定説になっています。
        
現在の名前のナンバンギセルは(南蛮煙管)は、煙草のパイプの形から。
中国では薬用として用いられますが、日本では山草として珍重されています。
 

集中1首のみ。思ひ草に寄せる秋の相聞歌。
道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ      作者不詳 巻10-2270

どちらの訳がお気に入り?
・道の辺の尾花の根元に寄り添って咲く思ひ草は、うつむいてなにやら思わしげですが、私は今さら何をを思い嘆きましょうか。あなたお一人を信じ頼りに思っているのですから。 (「何」を結句に移して「いまさらに」 → 「何をか思はむ」。)

・長い間あなたのことを思い続けてきました。でも私の心は通じないようです。あの薄の陰にひっそりと咲いている思ひ草のようです。あなたのことはもう忘れることに したほうがいいのでしょうか。(訣別の歌?)(「何」をを「如何なるものぞ」と取る