万葉の植物  ゑぐ  を詠んだ歌
                               2011.12.12 更新

 
     

                         ↑雄花 
         

                     ↑果実(実)

   ゑぐ (万葉表記   惠具 佪具)  オモダカ (オモダカ科)(別名 花慈姑)

中国原産の渡来植物。夏の初め、水面から長い茎を伸ばし白い三弁の花びらを持つ雌花と雄花をつけます。
泥の中から咲く白い花はとても爽やか。人の顔に似た葉を高く伸ばし、葉脈が目立つことから面高(おもだか)と呼ばれていますが、何度見てもこの葉が人面には見えません。
どちらかと言えば、「花の面が水面高くある」ことから面高(おもだか)と言われるのではないかと思えます。(これは私見)
また、中国語で湿地を意味する涵澤(オムダク)から取られたとも言われています。葉はやじりのような形。
水田の雑草として繁るに繁る、農家泣かせの植物です。
面高とは鼻が高いこと。中高(なかだか)な顔のこと。
面高な美人という表現も。そうか。この葉を反対にすると面高な美人に見えますね。

オモダカの栽培変種であるクワイは、塊茎が大きくなり食用となるため栽培され、塊茎の形が、「芽が出る」ことに通じ、縁起物として おせち料理などに使われます。(芽をきちんと残して料理するのが面倒・・・)
 
「クワイ(慈茹・くわい)。 
葉と長い葉柄が、農具の鍬(くわ)に似ていて、芋(いも)のように根が 食べられることから 鍬芋(くわいも)と呼ばれ、しだいに「くわい」になったそうです。
漢字の「慈茹」は漢名から。 江戸時代の医者が結った髪の形を「慈姑頭(くわいあたま)」と言いました。そういえば、頭の先に芽が出ている様子が似ていますね。

家紋としてオモダカの葉を意匠に用いたものがあり、慶事用に、鶴とにオモダカの文様が使用されている切手があります。
http://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/stamp/standard/index.html いずれもめでたい模様ですね。
         郵便事業株式会社のHPより →  


この「ゑぐ」と呼ばれている植物が何であるか、古来各説あります。
例えばセリ、クログワイ、オモダカクワイ、ゲンゲ、アマドコロなど。
 

集中2首。

  君がため 山田の沢に ゑぐ摘むと 雪消の水に 裳の裾濡れぬ       作者不詳   巻10-1839

  あしひきの 山沢ゑぐを 摘みに行かむ 日だにも逢はせ 母は責むとも   作者不詳  巻11-2760

(いずれの歌も沢で摘むゑぐを詠んでいます。地下塊ではなく、新芽を摘んで食す ---あつものにでもしたのでしょうか。)