万葉の植物  をぎ   を詠んだ歌
                                2012.10.10 更新         

 
  
   をぎ  (万葉表記    荻 )  ヲギ  (イネ科)

河原や水辺に生える多年草。 時に大群落を呈します。高さは1から1.5メートル。ススキによく似ていますが、地下茎で殖えることからススキのように株立ちせず、葉はすべて茎から立ち上がります。ススキに比べて花穂が大きくふさふさした感じ。荻の歌からは、全体に寂しい印象を受けることが多いようです。風の音、季節は秋、さやぐ白褐色の穂。どれをとっても人の世の秋をおもわせるものがあります。
 

  碁檀越(ごのだんをち)の伊勢国に往きし時、留れる妻の作る歌一首
 神風の伊勢の濱荻(はまをぎ)折り伏せて旅宿(ね)やすらむ荒き浜辺に  碁檀越の妻 巻4-500

( 夫が伊勢へ出かけた時、残された妻が詠んだ歌。「神風の」は「伊勢」の枕詞。浜辺に生えている荻を折り伏せて今夜は寒空に旅寝をしているのでしょうか。夫よ。わびしいことでしょう。お元気で。)         

 葦辺なる荻の葉さやぎ秋風の吹き来るなべに雁鳴き渡る   作者不詳 巻10-2134
(「葦が生えているそばのをぎの葉」。葦と荻を峻別していたようです。)

 妹なろが使ふ川津のささら荻(をぎ)あしと人言語りよらしも  東歌 巻14-3446  

(風にそよぐ様子を「ささら」と表しています。「あし・葦・悪し」と繋がることから、荻と葦は同類とみなしていたようですね。たしかに良く似ています。)