万葉の植物      ぬばたま を詠んだ歌
                              2010.4.15 更新               

 
    
   ぬばたま (万葉表記   烏玉 烏珠 夜干玉 奴婆珠など)   ヒオウギ (アヤメ科)

檜扇は宮中で使われる檜の薄い板で作られ、儀礼に用いられたもの。
このヒオウギの根元から出る葉は、広い剣状で葉が扁平に互生し、見たところ檜扇に似ています。
ヒオウギそのものが詠まれることは無く、ぬばたまの黒い実を、黒、夜、暗、夢、闇、夕、髪などの枕詞して詠まれています。
 
 

 ぬばたまの夜の深けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く               山部赤人   巻6- 0925 

 ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しも嵐かも疾き           柿本 人麻呂 巻7- 1101 

 居明かして君をば待たむぬばたまのわが黒髪に霜は降るとも        磐姫の皇后  巻- 0089
     
 あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも        柿本人麻呂  巻4-0169

 子らが家道やや間遠きをぬばたまの夜渡る月に競ひあへむかも        安倍広庭   巻3- 0302

 ぬばたまの黒髪変り白けても痛き恋には逢ふ時ありけり           沙弥満贅  巻4- 0573

 ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月夜の見れば悲しさ        大伴坂上の郎女  巻6-0982    

 ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ           
柿本 人麻呂  巻10-2456

 ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥二上山に月かたぶきぬ           土師道長   巻17-3955