世界で一番高い場所へ

人間は、北志向と南志向人間、あるいは山志向と海志向人間に分けられるらしい。典型的な北志向+山志向のわれわれ、一生の思い出にと、世界で一番高い山を見る旅に出かけた。
11月はネパールの乾期に当たり、山を見るには一番お薦めの季節だ。



中央のひときわ高いのがエベレスト(8848m)。チベット語ではチョモランマ、ネパール語ではサガルマータ。
コックピットの内部に入れていただき、撮影した。
この雄姿を表現する言葉をもたない。
何人もの登山者が命を落とし、登頂成功の感動に身を震わせた山。



50人乗りのプロペラ機をチャーターして。
機体の横腹には「ブッタエアー(
Buddha Air)」とある。
「しばしば落ちる」・・・・「時々落ちる」・・・・「たまに落ちる」・・・・「落ちることもある」と社業が発展していき、
現在は比較的安心して乗れる飛行機に出世した。
 
このブッダエアーに初めて乗った6年前は、「おおよそ半年に1回は落ちる」時期だった。
旅の直前と直後に落ちて、日本人の犠牲者も出たと記憶している。
おまけに「機体はアメリカらか5000ドルで買った」などというパンフレットが置いてあって、「われわれも1機買おうか」といった冗談を口にしたのを思い出した。
しかし、機体にブッタとあるからには、落ちる先はきっと極楽だろう。



  ヒマラヤの山桜は、花芯が浅葱色。



サランコットの丘にあるホテル(ヒマラヤン・フロント)の屋上から、朝焼けのマチャブチャレ(6993m)を見る。
カトマンズから飛行機で1時間の距離にある山岳都市ポカラ。この山はポカラから北へ25キロに位置し、写真左に広がるのは、アンナプルナ連峰。
このマチャプチャレは、頂上が二つに分かれていることから、ネパール語で魚の尾を意味する名前が付けられている。
地元住民の信仰の対象の山で、今も登山が禁止されている。
東の空が明るみ、陽を受けて山が薔薇色に輝き、その薔薇色が薄れ、しだいにたおやかな雪の色に変化していく様子は息を飲む美しさ。

  ・ わが魂よ幽体離脱したるのちアンナプルナのいただきを這へ

  ・ 菜のはなの一面の黄の海見えて海にそびゆるマナスルの山

  ・ 空受けて三日の月のひかり射し目覚めてゐしか雪のやまやま

                     里山の暮らし349  2017.12.1  

       

    世界で一番高い山はエベレスト ・・・ ではない?

エベレスト山の標高は8848mで世界一高い山。
標高とは平均海面からの高さを表す指標だ、とここまではすんなり頭に入ってくるが、じつは地球は完全な球体ではない ことから、思いがけないことが起きている。
地球は
赤道あたりがやや膨らんでいる楕円形で、地球の極半径(地球中心を通って南極点と北極点を結ぶ距離)は赤道半径よりも 短い 。 加えて赤道付近では遠心力も影響し、海面も高い。

これを具体的に言うとこうなる。
赤道が通る国・南米エクアドルの首都キトから約150Km南へ位置するチンボラソ山は、標高6310m。この数字だけ見るとなるほどエベレスト山(8848m)のほうが高い。
地球の中心から双方の山の頂上までのの距離を計測すると、 こういう結果になるらしいのだ。
エベレスト山は 6382.3km
対してチンボラソ山は 6384.4km。
つまり。
地球の中心からの距離は、赤道付近のチンボラソ山の方が、エベレストより約
2100
m 長いことになる!
チンボラソは世界一高い山・・・・
                高いというよりも、宇宙へ飛び出している、宇宙へ一番近い山と 言う表現に惹かれる。

  
Volcán Chimborazo
上がチンボラソ山。山頂部は氷河に覆われていて、雪線高度は約4800m 。その昔。むかしむかしのお話。遡ること30数年、この山の「青い←」の地点まで登ったことがある。
顔は土気色、一歩進んでは休み、二歩登っては息をととのえ・・・ようやく5100m地点まで歩き、そこでドロップアウトしてしまった。残りは1200mだったのに、なんて畏れ多い!  なにしろ登山は素人で、あの時は必死だったのだから。

これをエベレストに当てはめるとどうか。エベレストの頂上よりも宇宙に飛び出したことになる?

わ・た・し。     すごくない?
  
   エクアドル国旗の中央にあるのはチンボラソ山。コンドルが羽を広げている。  

                      里山の暮らし350  2017.12.9