万葉の植物 ときじきふじ    を詠んだ歌
                               2012.5.15 更新          

 

       

   ときじきふじ (万葉表記  非時藤)      ナツフジ  (マメ科)

日本固有種で 本州の東海地方以西から四国、九州に分布するつる性落葉樹。和名は「フジに似ていて夏に花が咲く」から。
一見フジに似ていますが、生長が遅く庭のナツフジも30センチと背が低いながらも樹齢10年以上。花が咲くのに何年もかかります。
7月から8月にかけ、15〜20cmほどの花穂を形成し、白に近いクリーム色のふさふさした花を咲かせます。
夏に咲くことからドヨウフジ(土用藤)の別名もあり、葉は長さ10-20cmで互生し、奇数羽状複葉。フジは枝の先端に花をつけるのに対し、このナツフジは葉腋から花穂が出て蝶形の花をつけます。

 わが屋前の 時じき藤のめづらしく 今も見てしか妹が咲容を    大伴家持  巻8-1627

 (咲容は「ゑまひ」。にっこりすること。天平12年(740年)夏6月(陽暦では7月)家持23歳のおり、やがて妻となる坂上大嬢に贈った歌です。「題詞には「ナツフジとハギのの紅葉を折り取りった」とあり、巻8の秋の相聞歌に載せられています。
「わが屋前の時じき藤」は「めづらしく」の序詞で、比喩表現としても置かれています。

紅葉し始めた萩と夏藤を贈る --- 萩は秋の花と思いがちですが、年によっては6〜7月から花を付け始めます。特にヤマハギとシロバナハギは早いようです。)