万葉の植物 なはのり を詠んだ歌
                               2012.12.21 更新          

 

     

   なはのり (万葉表記 縄乗 縄法 奈波能里 )     ウミゾウメンなどのひも状の海草     

ウミゾウメンとは海素麺か。ベニモズク科の紅藻類で波の荒い磯に付く海草。細長い海草でひも状。食用。
ナワノリ=縄海苔。浅瀬にあって波に揺れる姿を目にし、引っ張ると採取できることから「心をたぐり寄せる」の表現に使われます。栃木は海の無い県ですから、このウミゾウメンにお目にかかるのは難しい---。
 
 海原の沖つ縄海苔うち靡き心もしのに思ほゆるかも   作者不詳 巻11-2779 
 
  (「海原の沖つ縄海苔」は「うち靡き」を導く序詞。心が萎え、寂しくてあなたを思う。恋の歌。)


 わたつみの沖に生ひたる縄海苔の名はかつて告らじ恋ひは死ぬとも  作者不詳  巻12-3080

  (「なはのり」と「名」が同音。激しく貴方を恋しても、けっして名前を明かしません。)

  わたつみの沖つ縄海苔来る時と妹が待つらむ月は経につつ   遣新羅使人  巻15-3663

  (「縄海苔を繰る」と「来る」を掛けたもの。天平8年6月、難波を船出した遣新羅船。秋には帰ると妻に言い残した、その秋が来たのにいまだに筑紫の港にとどまっている。月日は過ぎ行くもの、月が美しくも悲しく心に写る--。)