万葉の植物  むし  を詠んだ歌
                                 2011.9.22 更新        

 

         

   むし  (万葉表記  蒸)    カラムシ  (イラクサ科)

夏の終わりから秋の初めにかけて淡い緑色の花を咲かせます。
茎は硬いので蒸してから皮を剥ぎ、繊維を細かく裂いて作ります。
質感は、上質の麻。手触り爽やかで、透けて見えるほどの緻密な織り物。今や貴重品でめったに目にすることはありません。さぞかし、上流の人物の夜具として利用されたことでしょう。

  むしぶすま 柔やが下に伏せれども 妹とし寝ねば肌し寒しも   京職藤原大夫  巻4-524
  
  (むしぶすまは、カラムシで作った寝具。この歌は坂上郎女に送ったもの。作者は藤原不比等の子で藤原四兄弟の末子。ひたすら風流を求めた人物。天平9年夏、当時流行していた天然痘にて死去。)

    千鳥鳴く 佐保の河門の瀬を広み 打橋渡汝が来とおもへば  坂上郎女      巻4-528