万葉の植物 むぎ を詠んだ歌 2011.7.24 更新 |
|
|
むぎ (万葉表記
麦 武芸 ) オオムギ コムギ (
イネ科) 麦は大きくオオムギ系とコムギに分けられ、日本には、弥生時代に中国大陸から朝鮮半島経由で伝わ ったとされており、万葉の時代には広く栽培されていました。イネ科の穀物。中央アジア原産で、世界で古くから栽培されていた穀物のひとつ。 伝来当時、比較的簡単に脱穀でき殻やフスマを取り除いて粒を飯や粥として食べられたオオムギ は、コムギよりも上等な食物だと考えられていたようです。 したがって、下に詠まれた麦も、オオムギと受け取ったほうがいいのでしょう。 オオムギ、コムギとも北海道では春に種を蒔き秋に収穫し、本州以南では秋に種を蒔き 初夏に収穫します。米の裏作として栽培されるのが一般的で、5月末から6月にかけてが穫り入れの季節。(写真は5月末から6月にかけて) やや汗ばむくらいの陽気のなか、黄色く熟した麦の穂が南風になびく様子は、それを見る人の精神が(今はやりの言葉で言えば)癒され、心の隙間が埋められるような気分になるのです。 この時期を「麦の秋=麦秋」と呼ばれるのもむべなるかな。同じ時期の「竹の秋」という季語もありました。 オオムギは: ビールやウィスキー、焼酎などの酒類や醤油・味噌などの発酵食品の原料として使われます。コムギとの大きな違いはグルテンを含まないこと。 麺類の原料にするために、コムギを足すか、、グルテンを加える必要があります。パンに焼いても膨らみに乏しく、小麦のパンとは食感が異なるどっしりとした重い感じのパンができ、それはそれで美味。 はったい粉、水あめ、シロップ、麦茶、青汁の原料としても利用されます。 コムギは: パン、うどん、中華麺などの麺類、菓子、パスタなど、さまざま。
いずれも、脚気を予防するビタミンB類を多く含みます。しかし、最近は麦アレルギーが問題になっているようで、食物に逆襲される人間の悲しさをどう捉えるべきか---。 |
馬柵越しに 麦食む駒の罵らゆれど 猶し恋しく思ひかねつも 作者不詳 巻12-3096 (「馬柵越しに 麦食む駒の罵らゆれど 」までは「猶し恋しく」の序詞。誰に「罵らゆれど」?それは母親でしょうか。叱られても、恋しく思う心に耐えられない。) 柵越しに 麦食む駒のはつはつに 相見し子らしあやに愛しも 東歌 巻14-3537 (こちらもやはり馬に寄せた恋の歌。「はつはつに」の響きが、恋しく思う娘子へのいとしさをより際立たせていますね。駒とは雄の乗用の馬。馬も農耕に用いられていた時代です。農民の生活の中で役に立つ馬と恋しい娘を結び付けている、生活に根ざした歌) 馬柵越し 麦食む駒のはつはつに 新肌触れし子ろし愛しも 東歌 巻14-3537 (東歌の特徴=まっすぐに自分の感情を表しています。こころから愛しいあの子よ) |