万葉の植物  もも   を詠んだ歌
                              2011.5.1 更新

 
  
   もも (万葉表記  桃)          モモ  (バラ科)

バラ科の落葉高木。春もやや進んだころ、写真の通りの桃色の花が咲きます。原産は中国。古い時代に日本に渡来。
桃は鬼や悪霊を退散させる木の実だと考えられていたようです。(犬、猿、雉をを引き連れて鬼退治をするのは「桃から生まれた桃太郎」ですね。)
長寿の象徴でもあり、今でも3月3日の節句(上巳の節句)に桃の花を飾ります。

  [ 奈良県桜井市の纒向遺跡は女王・卑弥呼が治めた邪 馬台国の候補地の一つとされています。2010年7月から行われた発掘調査で、あるいは卑弥呼の宮殿では、と目されている建造物のそばから、桃の種が2000個以上発見されました。祭祀のために供えられたと考えられています。]  (2010年9月18日日本経済新聞朝刊より)

  [伊邪那岐命(いざなきのみこと)が、伊邪那美命(いざなみのみこと)を訪ねて黄泉国に行き、その醜い姿に驚き、逃げ帰る時、桃の実を3個採って鬼に投げつけたところ、鬼が黄泉の国に逃げ帰ったのでようやく現世に戻れた] (『古事記』より)



 向つ峰に 立てる桃の木ならめやと 人ぞささやく汝が心ゆめ          作者不詳 巻7-1356

  (桃の実が成ることは、恋が成就することか。桃の持つ不思議な力と男女の関係を結びつける)

  はしきやし 我家の毛桃本茂く 花のみ咲きてならずあらめやも         作者不詳 巻7-1358

   (毛桃とは今の桃、毛の無いのは李)

大和の 室生の毛桃本繁く 言ひてしものをならずはやまじ           作者不詳 巻11-2834

桃染めの 浅らの衣浅らかに 思ひて妹に逢はむものかも             作者不詳 巻12-2970

 春の園 紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つ娘子               大伴家持 巻19-4139
    (この娘子とは、家持赴任先の越中へ下向してきた妻、坂上大嬢か。
         樹下美人図の代表作、「鳥毛立女図屏風」に描かれている、天平美人の豊頬を思い出しませんか。
    命溢れるばかりの若々しい女性と、春の盛りの桃の花と。
    この取り合わせは幻のようでもあり、うつつでもあり---。)

 桃の花 紅色ににほひたる面輪の うちに青柳の.......(長歌)          作者不詳  巻19-4192