万葉の植物 おみ を詠んだ歌 2012.10.12 更新 |
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おみ (万葉表記
臣木) モミ (マツ科) 青森県を除く本州、四国、九州に自生する日本特産の常緑の高木。時に高さ40mにもなり、その堂々たる姿から、霊木として崇められていました。枝は水平に張り出し、自然に円錐形の美しい樹形となります。雌雄同株。珠果は円柱形で上向きに付きます。 |
集中1首のみ 山部宿禰赤人が伊豫温泉に至って作る歌一首ならびに短歌 すめろきの神の命(みこと)の敷(し)きませる国のことごと湯はしもさはにあれども島山(しまやま)の宣しき国とこごしかも伊予の高嶺の射狭庭(いざには)の岡に立たして歌思ひ辞思はししみ湯の上の木群(こむら)を見れば臣(おみ)の木も生ひ継ぎにけり鳴く鳥の声も変らず遠き代に神さびゆかむ幸(いでま)しところ 山部赤人 巻3-322 (伊予温泉は、漱石の「坊ちゃん」で知られ道後温泉。おみのきは樅の木。常緑で大木に生長することから、神聖な霊威の宿る木と考えられていました。天上、地上、地下の3世界をつらぬく聖なる木。古くから噴出する温泉の湯も生命を蘇えらせる力があるとされていました。 「伊予の高嶺の射狭庭(いざには)の岡に立たして歌思ひ辞思はしし み」した天皇は誰か?『日本書紀』によると伊予の湯に行幸したのは過去2天皇。舒明天皇と斉明天皇。さらに『伊予国風土記』では景行天皇、仲哀天皇の行幸と聖徳太子の訪伊予が記されています。どの天皇のことか?定説は確立しません。 赤人は自然を謳いあげる歌人。自然の美しさを天皇讃歌に込める、この力量をまざまざと感じさせてくれる長歌です。) なお反歌は、 ももしきの大宮人の熟田津に船乗りしけむ年の知らなく 巻3-323 (この反歌から、斉明天皇の7年(661年)正月、新羅支援のために九州へ向かう時の歌 |