万葉の植物 くり を詠んだ歌 2010.5.14 更新 |
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くり (万葉表記 栗) クリ (ブナ科) 集中3首の歌があり、そのうち2首に「三栗(みつぐり)」が用いられ、「中」にかかる枕詞として使われています。 毬に三個栗が入っていることは珍しく「中」は特別な存在で、三栗は被枕「中」を讃える言葉と考えらえます。 「中」が表象するものは、ものの中心としての「中」、上下左右を取り持つ「中」。 初夏、垂れ下がる花穂と、あたりに放つ独特の匂いが印象的です。 ドングリや栃の実のようにあく出しをせずに生食、保存が出来るので、古代には貴重な食物でした。 山野に自生する栗は「柴栗(山栗)」で、毬も小さく堅果もほんの爪ほどの小ささ。拾うのも加工するのもひと手間かかりますが、そのぶん香りも甘みも強いのです。 栽培の記録は古く、万葉の時代にはすでに丹波が栗の産地として知られていました。 |
三栗の那賀に向かへる曝井の絶えず通はむそこに妻もが 作者不詳
巻9-1745 松返りしひてあれやは三栗の中上り来ぬ麻呂という奴 柿本人麻呂 巻9-1783 瓜食めば子等思ほゆ栗食めば況して偲ばゆいずくより来たりしものそ目交ひにもとな懸かりて安眠しなさぬ 山上憶良 巻5802 (子等を思ふ歌) |