万葉の植物  このてがしわ   を詠んだ歌
                               2011.7.4 更新

 

    
   コノテガシワ (ヒノキ科)  常緑性           コナラ(ブナ科)

    
   カシワ (ブナ科)                 オトコエシ (オミナエシ科)


   
このてがしわ (万葉表記   古乃弖加之波 )       

集中2首。しかしコノテガシワが現在のどの植物にあたるのか、いまだに定説がありません。
コノテガシワ、コナラなどの若い葉、カシワ、オトコエシを紹介します。
ある特定の植物ではなく、その時その時に詠まれた植物に「コノテガシワ」という名前を与えたとも考えられましょう。
コナラの葉が芽吹き展開する前の姿は、幼い子供が手を垂らした様子に似ていますね。
また左上のコノテガシワの葉姿は、子が手のひらを合わせて立てた様子にそっくりです。しかも裏表が判然としない---ふたごころあることのたとえにされたと言えるでしょうか。
 
  奈良山の 児手柏の両面に かにもかくにも侫人の伴   巻16-3836     消奈行文

(「侫人(こびびと)」とは、裏表のあり人にへつらう人物のこと。この歌だと、左上のコノテガシワがぴったりきます。しかし、コノテガシワは万葉時代には自生がなく、江戸時代に渡来したという説もあります。 しかしこの実の可愛らしいこと。)

  千葉の野の 児手柏のほほまれど あやに愛しみ置きて誰が来ぬ  巻20-4387    大田部足人
  (コノテガシワの葉の開き始めのような初々しく可愛らしいあの子なので、手も触れずそのままにして旅に出てしまった。遠くへ来たものだ--。防人として任に付いた大田部足人の歌。 この歌に相応しいのは右上のコナラの若葉かもしれません。展開し始めた若い葉の銀緑色の葉の可愛らしさが年端もいかぬ乙女の姿に重なりませんか)