万葉の植物  かには  を詠んだ歌
                          2011.3.7 更新

 
  
山桜                 ウワミズザクラ

   
かには (万葉表記  桜皮)  チョウジザクラ (バラ科)  ウワミズザクラ(バラ科)                             
                                                      ウダイカンバ(カバノキ科) シラカバ(カバノキ科)   
 
船や器物の継目や合わせ目の隙間を塞ぐために巻く、サクラ類の総称。
ウダイカンバ、シラカバなどのカバノキ科の樹皮も、同じ用途に使われていました。
先日、偶然に友人の所で桜の樹皮を使って編んだ手提げ袋を見る機会がありました。桜の樹皮を幅10センチ、縦に1メートルくらいの長さに剥ぎ、更に細く裂いて編んだものです。
しなやかで使えば使うほどしっくり手になじみ、光沢が出てきます。
この友人、ゆったりと時が過ぎゆく、手づくりを生かした暮らしを楽しんでいます。雪の日の今日は、きっとストーブを囲んで近所の人たちを招き寄せ、コーヒーを沸かし他愛も無い話に花が咲いていることでしょう 。
ウワミズザクラは古名を、波波迦(ははか)、樺桜、朱桜(かには)と書き表し、樹皮は樺細工に用いられています。
樺とは木の皮のこと。したがって、樺桜は総称としてウワミズサクラ、チョウジサクラ、ヤマザクラ系の桜の皮を指します。

蛇足ですが。
カバノキの樹皮は良く燃えるようです。

ウダイカンバ
 = 鵜松明樺  鵜飼いの松明として利用。 --- 古名を樺(かには)
シラカバ    =お盆の迎え火や送り火の松明として利用されています。(特に北信濃地方において。)
          那須地方での「苧殻・おがら」(アサの皮を剥いだ茎)を焚くのと同じですね。
 

 集中1首のみ
  あぢさはふ 妹が目離れて敷栲の 枕もまかず桜皮(かには)巻)き 作れる船に真楫貫き 我が漕ぎ来れば淡路の 野島も過ぎ印南嬬 辛荷の島の島の際ゆ 我家を見れば青山の そことも見えず白雲も 千重になり来ぬ漕ぎ廻むる 浦のことごと行き隠る 島の崎々隈も置かず 思ひぞ我が来る旅の長み    山辺赤人  巻6-942

  (野島は阪神淡路大震災の震源地。    ウワズミザクラ、ヤマザクラ系の樹皮を使ったと思えます)