万葉の植物 かへるで   を詠んだ歌
                                 2011.10.5 更新        

 
  
                           アマガエル 手を見せて!
 
   かへるで (万葉表記   蝦手 加敝流弖 )    カエデ (カエデ科) イロハモミジ、ヤマモミジなど

 蛙手。 なるほど。葉の形が蛙の手に似ていますね。

   
    ウリカエデの翼果   カエデですがカエルデではありません。

秋の終わり、ウリカエデの種が風に吹かれて旅立つ様子はまるでヘリコプター。ぐるぐる、螺旋を描きながら落ちていきます。努力の割りに遠くまで飛べないのがこっけい。芽生えた幼苗を抜くのが大変です。

弾ける、動物に運んでもらう、閉鎖花を付ける、むかごを付ける、などとさまざまな工夫をして繁殖をめざす植物の、一途な思いを汲み取って今の季節の移り変わりを心にとどめたい。
 

集中2首

  我が宿に もみつ蝦手見るごとに 妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし   田村大嬢 8-1623

   (田村大嬢が異母妹の坂上大嬢に送った歌。男女間の相聞のようですね。田村大嬢の歌は万葉集に8首。いずれも坂上大嬢に送った歌です。妹に対して深い愛情を持っていたようです)

 子持山 若かへるでのもみつまで 寝もと我は思ふ汝はあどか思ふ  東歌 巻14-3494

   (「もみじ」は「もみつ」と言う動詞から。万葉の時代は樹木や草が紅葉や黄葉することを言いました。
この時代には色が厳密に識別されていません。暗い=黒 明るい=赤 顕く(しるく)=白 漠い(あおい)=青 色をこれら4通りに呼びました。4色に「黄」が加わり、さらに緑や紫が認識され飛鳥時代には階級に色が対応するように。平安時代になるとさらに多くの色が意識されるようになり、日本の伝統色として作られ、美しい言葉と共に今に残ります。)