万葉の植物    ほよ   を詠んだ歌
                                 2010.12.3 更新          

 
   
   ほよ (万葉表記   寄生 保与 寄生木 )    ヤドリギ (宿木 ヤドリギ科)

半寄生する常緑の低木 (木と呼ぶにはおこがましいかもしれません)。ケヤキ、エノキ、ブナ、ミズナラ、コナラなどに寄生します。写真のヤドリギは、那須高原標高1100mに生えるブナの木に寄生したもの。
半寄生植物とはいうものの、葉緑素を持っていて自らも光合成を行っています。
葉も茎も一年中緑色をしていて、枝に寄生している様子はまるで丸い緑の木の玉。春先に小さな黄緑色の花を咲かせ、実は秋に淡黄色に熟します。果肉を潰すと粘着物質(ねとねとした)に包まれた種子があるのです。この果肉を好んで食べるレンジャクの腹を通して繁殖を目指しています。
(糞もやはりねとねとしているのですね。それが他の樹木の幹にくっつき根を張り芽吹き---。)
ちなみに、レンジャクで検索してみてください。それはそれは、冠羽をピンと張り遠くを見つめる姿はまことに粋なもので、小鳥ながらあっぱれ!樹上でさんざめくその声たるや、鈴とハープが合奏している ---- 夢見心地なひととき。
 

集中に一首だけ詠まれています。

 あしひきの 山の木末のほよ取りて 挿頭しつらくは 千年寿くとそ  大伴家持   巻18-4136
                          
天平勝宝2年(750)、正月2日に行われた宴の席で詠んだ歌です。この時家持33歳の春。
ヤドリギは冬の間にも鮮やかな緑色なので、万葉の人々は強い生命力を感じ、聖性を持つめでたいものとしたようです。

ヤドリギは神の憑代。神聖な植物とされ信仰や崇拝の対象となっていたのは、日本だけのことではありません。キリスト教以前の古代のヨーロッパでも万病に効く薬とされていました。ヤドリギの下で思う人にキスすると結ばれるという言い伝えはよく聞くところですね。

しかし、「ほよ取りて」---手が届くところにヤドリギが生えていた例に出合いません。高枝切りの、それもおもいっきり長いのが必要な場所に生えているので、ただただ指を咥えて見上げ、カメラをズームに設定して失敗写真 を増やしているばかりなのです。